メージ症候群(前半) | kyupinの日記 気が向けば更新

メージ症候群(前半)

この女性患者さんは、偶然うちの病院にやってきた。

なぜ来たか聞いてみた。僕はうちの病院に来た理由を、初診の時に聞くことが多い。これは僕には非常に興味あることなのだ。彼女によれば、近所の女の人でいつも首を振っていた人が急に良くなったので、何処の病院にかかっているか聞いて受診したのだと言う。

その女の人とは、統合失調症の女性患者さんで長いことセレネースの単剤で治療されていた。ずっと何十年も働いていて社会適応が良い人だったのである。ただ、その患者さんはセレネースの少量でもジスキネジアが生じており、本当は非定型抗精神病薬に変更したかった。

しかし、何十年もの間きちんと働いている人に非定型抗精神病薬に変更なんて危険なことはできない。セレネースも3mgくらいしか処方されていないことも変更しなかった理由だった。(もちろん、本人が変更を嫌っていたこともある)

ある時、ちょっと調子が落ちたので本人を説得して、清水の舞台から飛び降りる気持ちでリスパダールに変更した。

すると、ぴったりとジスキネジアが止まった。ここまでならハッピーエンドなのだが、この人の場合はそうならなかった。それから半年後、急激に悪化したのである。本当に18年ぶりくらいの増悪だった。本当に非定型は不安定と思われても仕方がない。安定度は定型に劣るのである。

結局、入院治療になった。入院させてみると、悪化したその患者さんは大変な人で、緊張病性興奮状態では手がつけられなかった。保護室に収容したが、すぐにウンコだらけになってしまった。便弄というのでしょうか?この症状は今の若い人ではあまり見ないね。

セレネースとかトロペロン3A連日でも全然効果がないクラスだったのである。毎回の服薬だけでも大変だった。体が大きいし力は強いしでどうしようもなかった。いろいろ注射も含め多剤併用になってしまったのだが、僕はメチャクチャな多剤併用でも、どの薬が効いていてどの薬がダメなのか、自分の患者さんならわりあいわかる。もちろん間違うこともあるけど。これは薬の特性と患者さんの普段の様子を見ているので有害作用は特にわかるのである。

ある時、フルメジンとジプレキサが良いと確信した。糖尿病を恐れないといけない体型だったので、ジプレキサを使い始めたのが遅かったのである。

結局、薬物療法は、ジプレキサザイディス20mgとフルデカシン25mgだけにした。そのうち保護室を出られるようになり、本当にジワジワ効いている感じで、3ヵ月後に退院。この処方だと全然ジスキネジアが出なかった。今は職場にも復帰している。家族に今の様子を聞いてみたら、5年前よりもずっと良いんだそうだ。大人しくなったし、家でも静かに過ごしているらしい。

今は、ジプレキサザイディス15mgだけで、フルデカシンは止めてしまった。最終的に、ジプレキサザイディス5mgか7.5mgくらいが適量な感じがしている。この人の近所の人が、このメージ症候群(Meige症候群)の女性患者だったのである。

参考
メージ症候群(後半)