父は自宅の中でも迷うようになった。
いやそんなに大きな家でも無いし、
複雑な造りでもない。
「歯を磨きに洗面所に行こうか?」
「それは遠いとこか?」
「ここは台所やから、この壁の向こう側」
「遠いん違うん? 行きたかったらあんた一人で行ったらいい」
キャッチボールが出来てるようで出来てない会話のやりとり。
トイレもどこか分からなくなって、手を引いて連れていくことが多くなった。
そしてトイレに着くと
「ここで何するんや?」
「お父さん、トイレに行きたいって言ったよ」
「どうやったらトイレ出来るんや?
一回もやったことないから、やりかたが分からへん」
トイレに行きたいと言った直後からもう忘れている。
トイレの仕方も忘れたと言い出す。
どんどんいろんなことに時間がかかるようになって、
ショートの日数を増やしてもらって、
仕事への影響は随分軽減されたのだけど・・。
一方、それはそれで私は逃げたのじゃなかろうか?とか
もっと大変な思いをして面倒見ておられる方々が
世の中にいっぱいおられるんじゃなかろうか?とか思うと
やっぱり預ける日数を減らしたほうがいいのじゃないか?とか
ゆらゆらゆらゆら気持ちが揺れる。
一体誰の目を気にしているんだ私?
そんなことを考えている私の足元で
まったり眠るお方。
いらんことは考えんようにしよう・・。
