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悔しいくらいが丁度いい
負けるくらいが丁度いい
昔からそう思っていた
本気で好きになったから苦しいし
本気で追いかけたから届かないことが悔しい
そして
やっと手が届いた時には心の底から嬉しい
涙が流れるのは
きっとそういう時なんだと思う
そんな当たり前のことを
僕はいつの間にか忘れていた
ゴルフを始めて長い
嬉しかったこともあったし
悔しかったこともたくさんあった
だけど不思議なことに
ゴルフで涙を流したことは一度もない
大きな大会で結果を残せなかった時も
予選を数打足りずに通れなかった時も
胸の奥に悔しさは残った
それでも涙にはならなかった
隣で悔し涙を流す仲間を見ても
その気持ちを理解しているつもりで
どこか他人事だったのかもしれない
思えば僕は
ゴルフという恋人と
少し距離を置いて付き合っていた
好きではある
だけど傷つかない程度に
振られても立ち直れるくらいの距離感で
本当に心を奪われるところまでは
踏み込んでいなかったのだと思う
だけど先日の試合は違った
たった一打
その一打が
予選通過と敗退を分けた
たった一打なのに
その重さは想像していたよりずっと大きかった
もしあのパットが入っていたら
もしあのアプローチが寄っていたら
もしあのティーショットがあと少しだけ
そんな「もし」が
試合が終わったあとも何度も頭を巡った
それはまるで
好きな人に
あと一歩届かなかった恋のようだった
もう少し勇気があれば
もう少し素直になれていたら
そんな後悔ばかりが胸を締め付ける
でも
だからこそ気付いたことがある
ゴルフはただボールを打つ遊びじゃなかった
試合には
日頃の練習では感じられない緊張がある
一打の重みがある
そして
自分の弱さを隠せない残酷さがある
その舞台に立ったからこそ
僕は自分の甘さを知った
どこかで満足していたこと
どこかで油断していたこと
どこかで
「これくらいでいいだろう」と
思っていたこと
彼女は全部見抜いていた
だから一打届かなかった
だから振り向いてくれなかった
悔しかった
本当に悔しかった
だけど不思議と
今は少しだけ感謝している
もし簡単に予選を通っていたら
僕はきっと変われなかった
足りないものにも気付かなかった
もっと強くなろうとも思わなかった
失恋は人を成長させるという
それが本当なら
今回の敗戦も同じだ
この悔しさは
きっと未来の僕を強くする
だから今夜も
もう一度クラブを握る
振り向いてもらえなかった恋人に
次こそは胸を張って会いに行けるように
あの日届かなかった一打を
いつか笑いながら思い出せる日を信じて
