※動画はお借りしています







故障して傷ついた脚が


少しずつ元の柔らかさを取り戻してくると

また山へ触れたくなってしまいます




まるで一度だけ手を重ねた女性の温もりを

忘れられないみたいにね




筋肉痛の残る太腿も

階段を降りるたびに軋んでいた膝も

時間が経つにつれて

少しずつ滑らかな輪郭を取り戻していく

すると不思議なもので

心までまた山側へ引っ張られていくんです




でも同時に

「あの時みたいにまた壊れるんじゃないか」

そんな怖さも残っています




綺麗な人ほど

近づく時に緊張するでしょう?

山も少し似ています

優しく迎えてくれる日もあるけれど

一歩間違えれば簡単に牙を剥く

だからこそ惹かれてしまうのかもしれません




今年の3月頃までは

本当に順調でした

脚は軽く

呼吸も噛み合い

まるで理想的な身体のラインを眺めている時みたいに

自分の走りに無駄がない気がしていました




でもそこで少し浮かれてしまったんでしょうね

本番までの流れも曖昧なまま

「まだ行ける」

「もっと積める」

そんな感覚だけで前へ進んでしまった




トレーニングって

女性の美しさに少し似ている気がします

細ければいいわけでもなく

ただ筋肉をつければいいわけでもない

柔らかさと強さ

繊細さと安定感

その絶妙なバランスがあって初めて美しく見える




でも当時の僕には

その整え方がわかっていなかったんです

結果として故障し

積み上げてきたものは一度崩れました

走力も落ちたし

自信もかなり削られた




だけど

悪いことばかりじゃありませんでした

ハセツネCUPより長い時間

もっと深い疲労と孤独の中へ踏み込めたこと

あの領域を身体で知れたのは

大きな経験だったと思います




無謀だったのかもしれない

でももし故障がなかったなら

あと少し先まで行けたんじゃないか

そんな風に思えるくらいには

今の僕には余白があります

そしてその余白に入り込んでくるのは

結局またトレランなんですよね




女性のうなじを目で追ってしまうみたいに

気づけばまた山のことを考えている

次はもっと上手くやれる気がする

だからこそ

次のレースはちゃんと選びたいんです

簡単すぎても違う

無茶すぎても違う

完走できるかどうか

その境界線の上に立つような挑戦

少し背伸びをして

でもまだ手が届きそうな

そんな美しい距離感を

これからも追いかけていきたいんです






※画像はイメージです