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想像以上に劣悪な環境です。
宮古島の馬虐待、また起きた仔馬の死。劣悪環境の牧場から一刻も早く馬を救え
2018/12/15 https://hbol.jp/181084
S氏のもとでつながれた仔馬。この後骨折し、12月11日に死に至る
『週刊SPA!』や「日刊SPA!」で伝えられた、沖縄県天然記念物・宮古馬の虐待問題が、多くの人々に衝撃を与えている。その記事が掲載された『週刊SPA!』の発売日当日に、また一頭の仔馬が逝ってしまった。
今年の5月に母馬が餓死し、母乳を飲むことができないというのに、飼育者にミルクも与えられず放置されていた仔馬だ。事態に気づいたボランティアがこっそりとミルクをあげることで、何とか命をつなぐことができていた。あまりのことに、宮古島市には全国から抗議の電話が殺到している。
地元紙『宮古毎日新聞』も12月13日に、「宮古馬飼養戸数7戸から5戸へ」「劣悪環境の指摘も」とこの問題を取り上げた。
このような状況を受けて宮古馬保存会に新たな動きが出ているため、追加取材を行った。
馬の自主返納が決定した飼育者たちの実態
今回2戸の飼育者が、宮古馬を自主返納することが決定した。この2戸こそが今回の虐待問題の中心で、目に余る劣悪な飼育を行ってきた飼育者、N氏とS氏だ。N氏は3年間で10頭のうち7頭を死なせていて、S氏は2年間で4頭のうち3頭を死なせている。
その死因の多くは餌や水をまともに与えないことによる餓死や衰弱死だ。少ないとはいえ、1頭につき約8000円出ているはずの委託飼育料はいったいどうなっているのか?
S氏は前述の母馬を餓死させ、仔馬までも死なせてしまった張本人だ。「柵の一部が壊れたままで、仔馬がそこから外に出るため、綱で繋いでしまった」と説明している。
しかし、馬を少しでも知っている者ならば、仔馬を絶対につないだりはしない。仔馬は跳ねるので、つなぐと綱で首を絞めてしまったり、骨折してしまったりするため危険だからだ。案の定、仔馬は骨折が原因でみるみる弱っていき、死に至った。S氏が親子馬を揃って死なせてしまうのはなんと2度目だ。
S氏は、「妊娠している牝馬をほしがる」と地元では噂になっている。それは、仔馬が生まれると10万円の補助金が手に入るからだ。
妊娠中の牝馬を1頭飼っていた飼育者のA氏が、高齢のためこれ以上飼育することが不可能になり、3人の飼育者がそれを「引き取れる」と名乗りをあげた。3人とも「仔馬が誕生した際には、10万円はこれまで育てたA氏へ渡す」という約束をしていた。
ところがS氏から「その馬は自分がもらう」と横やりが入り、なんと市の畜産課はそれを認めてしまった。そして母馬の出産後に、S氏はA氏に10万円を渡すことはなかった。母馬と生まれた仔馬は世話をされず、結果的にはどちらも不潔な馬房のなかで無残な死を迎えた。
さらにS氏は、馬の飼育援助の一環で出ている馬事協会の助成金を受け取り、立派な厩舎を建てている。実は、この助成金はその前に別の飼育者への支給が決まっていた。しかしその飼育者には支払われることはなく、S氏には支払われた。その過程も不透明だ。
ちなみにS氏は、前回の記事で触れた「地元リゾートホテルが、保護を外された宮古馬を観光用に飼おうとしている」という件にもかかわっている(※現在、健康に育った宮古馬と触れ合うことのできる「宮古島東急ホテル&リゾーツ」とは別のホテル。同ホテルは宮古馬の保存に協力的で、所有の予定はない)。
宮古馬以外の動物も虐待している可能性が
N氏の場合は、宮古馬だけでなく肉用の馬や牛も飼育している。ここにいるすべての家畜は、宮古馬だけでなくほかの動物も悲惨な状況におかれている。
馬房は掃除されず、糞尿でチャプチャプの池状態。宮古馬たちは短い綱でつながれっぱなしの状態だったが、さすがにこれは市が指導したらしく、綱だけは外した(※ある旅行者がブログに写真をアップしてネットで騒がれたため、市は仕方なく言いにいったとの見方もある)。しかし今も、狭い馬房に閉じ込められて、放牧されることもなくぎゅうぎゅう詰めで飼われている。
【動画:糞尿で溢れた狭い馬房で、床に体をこすりつけ汚れた宮古馬(2018年11月)】
http://youtu.be/-N1OgeQNKu0
※ショッキングな映像が含まれております。
10月に1頭が死んだため少しスペースが空いたというから、あまりに悲しい状況だ。馬たちは地面に体をこすりつけるのが大好きだが、糞尿であふれた馬房でゴロゴロする馬の姿を見ると言葉もない……。獣医によると、皮膚病がひどく蹄の状態が心配だという。
そこで飼われている宮古馬ではない仔馬(現在は出荷されていない)は、今にいたるまで何か月も外につながれたままだ。雨の日も風の日も台風の時もずっと……。彼らは馬が死ぬと「この馬は弱かったから死んだ」と言う。こんな飼育者に、なぜ保存会や宮古島市は長きにわたって宮古馬を預け続けてきたのか謎である。
【動画:N氏のもとでは、宮古馬ではない馬たちが汚れた馬房に短い綱でつながれていた(2018年11月)】
http://youtu.be/5XtN0tAdc44
※ショッキングな映像が含まれております。
返納完了の3月31日まで、劣悪な環境に置かれる馬を救う動きも
何はともあれ、この劣悪な環境を放置する飼育者2戸が生き残った馬を返納することになったと聞きホッとしたものの、この飼育者のもとには返納が完了するまで宮古馬を置いておくことすら適切だとは思えない状態だ。
この件について島内の関係者から連絡を受けていた、国連生物多様性の10年市民ネットワークの坂田昌子さんは、担当部署である宮古島市生涯学習教育課に今後のスケジュールを聞いたという。坂田さんはこう話す。
「担当者は『次回の更新日が来年3月31日なので、その時に返納となる』と答えました。『S氏とN氏のもとに、あと3か月半も置いておくわけにはいかない! その間にまた殺されたらどうするんですか?』と聞くと、『12月19日に保存会で緊急会議を持つので、そのあたりのことも含めて自主返納の方法やそれにかかる予算調整を行います』という返事でした」
今現在、S氏のもとには1頭、N氏のもとには3頭の宮古馬が残っている。12月19日の保存会の会議しだいでは、この4頭の宮古馬たちの命は3月31日まで危機的な状況に置かれたままになるかもしれないのだ。
「S氏とN氏の手から馬たちを一刻も早く引き離したいので、飼育のひどさについて把握していたのかと尋ねました。そうすると『「週刊SPA!」で使われていた写真は古いもので、市は改善するように指導してきたし、今は綱を外している』と。
だからあの記事は昔の話で、現在の事実とは違うと担当者は言うんですね。『繋ぐのをやめたのはいつですか?』と聞くと、正確にはわからないとのことですが、そんなに前の話ではないそうです。
後で現地の方に確認を取ったのですが、当時の担当部署であった畜産課に、虐待に気づいた人たちから、何度も何度も綱でつなぐのをやめるようにとの抗議がきていたそうです。そしてやっと今年の初め頃に実現したとのこと。『写真は古いもの』と言いますが、つい最近までつながれたままだったのに『事実とは違う』と言われても……」(坂田さん)
現場確認した担当者は、餓死直前の馬を見ても見抜けず
市は、「飼育者に飼育環境の改善を指導してきた」として責任を回避したいようだ。だが、どう改善されたのか? 現場の確認はちゃんと行われていたのだろうか?
「月に1度か2度は現場確認をしているとのことです。しかし、S氏が餓死させた母馬も担当者は見に行ったそうですが、『けっこう痩せていたけれど、子を産んだばかりで栄養を取られているせいかな』と思ってしまったとのことです。この担当者が現場を見に行った後、すぐに餓死しているんですね。見ても状態がわからない人が確認に行っても、意味がありません。
何より問題なのは、担当者の方が『宮古島では昔は農耕馬だったので、外で十分運動しているため放牧の習慣もないし、N氏のような飼い方が普通だったので虐待ではない』と言い切ることです。糞尿まみれの狭い馬房につなぎっぱなしだったり、ぎゅうぎゅう詰めで飼ったりするようなやり方を、宮古島の人たちが“普通に”やっていたとは思えません」(坂田さん)
この担当者は今年4月から宮古馬の担当になったとのこと。馬のことには詳しくないので、サイアク飼育者たちの言うことを鵜呑みにしているのかもしれない。
「そのうえ、虐待とは殴ったり蹴ったりすることだけだと思っているようでした。動物愛護法では、家畜やペットに水や餌を与えず、不潔な環境のまま放置するといった『ネグレクト』(飼育放棄)は虐待であり、処罰の対象とされていることを知らないのでしょうか」(坂田さん)
12月19日の宮古馬保存会会議に注目
『宮古毎日新聞』の記事では、N氏やS氏と思われる人物が「金銭的に厳しい」「自分のものでもない宮古馬を預かるメリットがない」「虐待はしていない。(中略)ほかの家畜と同様にできる範囲での飼い方しかできない」と言っている。
しかしN氏が「いずれ天然記念物の指定から外れれば、自由に売買できる」という期待のもとに多数の宮古馬を引き受けたということは、関係者の多くが知っているという。その当てがはずれたので返したいだけのように見える。実際、あるマンゴー農園経営者には「もうすぐ天然記念物の指定が外れるから、1頭5万円で買わないか」と持ちかけていたというのだ。
一方のS氏も前述のように、適切な育て方をせずに2年間で4頭中3頭の馬を死なせているのに、「妊娠している牝馬を欲しがる」といわれてしまう人物だ。果たしてこのような人々が、沖縄県の天然記念物を預かってよいのだろうか?
また、こうした悪質な飼育者たちを黙認して、宮古馬を苦しめ続けた宮古島市行政の責任も重い。ただ、宮古馬の保存は今年3月まで市の畜産課が担当し、彼らがこのような状況を作り出してきたのであり、4月から宮古馬の担当となった生涯学習教育課は、いきなりその矛盾を背負わされることになり、気の毒な部分もある。
宮古馬保存会の会長も、昨年度までは下地敏彦宮古島市長が担っていた。これまで、宮古馬を保存からはずす動きを率先して進めようとしてきたのは、ほかならぬ下地敏彦市長本人だ。今年から保存会会長は下りているため、素知らぬ顔をするつもりなのかもしれない。しかし、ここまで放置してきた責任は下地市長も避けられないだろう。
現状を放置したまま、3月31日の返納の日を待っていたら、また死んでしまう馬が出てくる可能性もある。そうした事態を避けるために、12月19日の宮古馬保存会会議では、すぐさま馬をサイアク2牧場から引き離し、予算調整を行ってまともな飼育者に預けることが検討されることを願ってやまない。保存会がどのような決定をするか、今後も注視していかなくてはならないだろう。
ただ、この問題は、宮古島市や飼育者だけでは到底解決できない問題だ。どのような形で種の保存を行っていくのか。動物たちの命をどう扱っていくのか。日本全体で考えて行くことが必要なのだろう。
<取材・文/『週刊SPA!』宮古馬取材班>
~転載終了~
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