中国語原書39冊目 《蛙》莫言
《蛙》莫言
この本は、莫言がノーベル文学賞受賞した時に購入し、長らく積読状態だったものです。中身もどういうものか知らず、売ってる中では薄かったのでこの《蛙》
にした記憶があります。
当時読まなかったのは、敷居が高く難しいのではないか、というのが大きな要因ですが、数人の中国人(友人やオンラインレッスンの先生、共に20代女性)に莫言ってどう?と聞いたら、好きじゃないとか、もっといい作家たくさんいるよ、とかなりいまいちな、というより嫌悪感すら示す反応だったから。
え、意外に人気ないんだ?と感じました。
今回読みはじめて、衝撃を受けました。
すごい作品に出会ってしまった!!
内容は、中国の一人っ子政策の話です。
劇作家である主人公が、日本人の杉谷先生に向けて書いた手紙という形ではじまるので、日本人にとっては少し親近感があります。
とある農村で、たくさんの子供を取り上げ、尊敬されていた産婦人科医(主人公のおば)が、共産党の一人っ子政策に基づいて、こんどは取り締まる側にまわり、2人目を妊娠した女性を捕まえて堕胎手術を行う。おばの手から逃れるための妊婦の命がけの逃走劇が村中を巻き込みます。
そこに大躍進や文革の時代背景も相まって様々な悲劇が起きます。ラストは90年代改革開放時期の代理出産のところまで。
どんな手を使っても出産したい妊婦の執念、使命感に燃えるおばの気性の激しさと、おろおろと傍観者になるか、子供より富や権力に執着する男性陣の対比が面白いです。みんなに恐ろしがられるおばは、それほど嫌いじゃなかったけど、おばの部下の小狮子が人間的にどうよ、と感じ、私は最後まで嫌でした。
内容も描写もエグイいし血なまぐさいです。
タイトルの《蛙》
は赤ちゃんの比喩ですが、かわいい赤ちゃんの描写はなく、蛙にまつわる描写はどれもとても気持ちわるいです。
でも、私の中では、
これぞ王道の中国当代小説!
大陸ならではの人間の逞しさやおおらかさを描き切っています。
莫言原作の映画、『紅いコーリャン』は、私が初めて観た中国映画なのですが、
残酷なシーンと雄大な景色が今でも強烈に印象に残っています。
これが私の中国の原風景。
この作品も農村が舞台ということで、もし都会で起きればひたすら悲劇ですが、なぜかその悲劇も大自然にのみこまれ、どこかユーモラスで救いがあるような感覚もあります。
たしかにハタチそこそこの女性じゃ絶対楽しめない内容。
もし私が妊娠中に読んでいたら眠れなかったでしょう。
男性にとってはそこまで入り込めないんじゃないだろうか。
表現の乱暴さは知的な層からも好まれないんじゃないか。
それでも
多少の嫌悪感を持ちつつも先を読まずにいられない、
この作品に出会えて良かったです。
名前に体の一部を付ける習慣がある農村、というのが面白いです。
章ごとに内容や印象的なシーンをメモ書き。ほとんど時系列で進行しますが、文中に日付が出てくるのでそれを頼りに。


