カーライルから車で1時間ほど走った場所に住む友人が膝の手術を受ける為、入院した。
去年、仕事中にフラフラすると訴え病院に行ったら、血圧が200を軽く超えており、以後その薬も飲んでいるが、今も体調は良くない。
しかし何が原因なのか不明で、結局は「高血圧」という事になっている。

去年、大腿部の手術を受けた時、全身麻酔から覚めずに医師と看護師がパニックになった事があった。
その時、医師から「高血圧と知らなかった」と言われたという。

さて今回、友人は前日から入院した。
オペ用のガウンに着替え入院室で待機していると、執刀医である若い医師自ら「さあ、行きましょうか?」と迎えに来た。
友人は「まさかまさか・・今回も麻酔から覚めないという事はないよな・・・カルテで私の薬歴や手術歴、病歴などは医師が確認して手術を決めているはずやから・・」と思いながらも、オペ室に向かうエレベーターの中で「先生、一応確認やけど、私は高血圧で全身麻酔から覚めなかった事が去年にあったの知ってはりますよね?それを含めて、万全の体制で麻酔科の先生もやってくれるんですよね?」と世間話と思い話題を振った。

医師は蒼白になり、「ちょっと・・それは聞いてません。僕はただ膝の手術をする医師ですから、そういう条件なら若い僕には無理なので、経験豊富な医師で手術を受ける方が良いと思います、今日は辞めましょう」と焦り出した。

友人は「いやいや、ちょっと待ってよ。私の薬歴も病歴も何も見てへんのですか?」と聞いた。
医師は「そういうのは見ません。僕はアナタの膝の手術をするべき順番が来たから執刀するだけですから」と言った。
学校教頭である友人は「転校生でも、我々学校側はその子が前の学校でどうだったか、どういう特性があったかなど見ます。それなのに、患者が何の薬を飲んでいるかも見ないまま手術するんですか?」と言った。
医師は「患者の手術が必要か否かは、あなたのかかりつけ医師が大学病院に申し出て来ます。僕らはそれをアレンジし執刀するのみ。薬や病気の関係で手術しない方が良い、または麻酔にリスクがあるなら、かかりつけ医師が手術を受けさせるべきか否かという質問がこちらに来るはず。それが来なかった場合は、何の問題も無いから出来ると判断してする」と言った。
友人は「ならば私がもしも血液の病気があった場合、知らなかったらしらないまま手術するという事ですか?過去のカルテなど見ないなら、何の病気を持っているか知る由も無く、手術を決行するという事ですか?」と聞いた。
医師は「とにかく、今日は中止。経験豊富な医師の執刀日が決まったら、こちらから連絡します。あなたの場合、麻酔科医とのミーティングもせねばならないと思いますから」と言われ、友人は自宅に戻って来た。

友人が「ただただ呆れたけど、後で考えたら怖くなってきた」と言った。
あのまま「念のため」を聞かなければ・・と思うと、友人は「あんたらも、今後は医師に聞くまでも無いが・・・という質問はした方がエエで」とアドバイスをくれた。

こういう記事を書くと、イギリスの医師に問題があるように捉えがちであるが、医療に関わる人の配慮と注意が欠落しているからではないか、それはつまりシステムになるのかも知れないが、そうではないかと考える。
真相はどちらか分からないが、イギリスの医学部に入るのは、日本で医学部に入るよりも難しいとイギリスの医学部に留学していた日本人医師に聞いた事がある。
「医療レベルに関しては、決して日本と大きな差はないと感じる」と言っていた。

私が9年前に胸の手術を受けた時、執刀医がインド人の主任医師だった。
その時、「今オペ室が使えないのでここでやります」と、診察室で緊急切開手術が開始されたが、直接介助をするベテラン風ナースがそれに反対していた。
「ここでは不備が多すぎる」と言ったが、「緊急を要するので待てない」とし、そのまま切開手術となった。
私は「不備」の意味を「不潔すぎる」と捉えた。

その後、経過診察は時にイギリス人医師であったり、EU圏の医師であったりしたが、最後の検診の時にイギリス人のおじいちゃん医師に付き添って来ていた義母が「私は、あのインド人医師のやり方が本当に正しかったか今でも疑問です。もっとちゃんと手術出来ていたら、こんな傷にならなかったと思うと、日本から預かっている嫁と両親に申し訳ない気持ちで苦しい」と訴えた。
医師は「色んな国から医師達が来てくれている。そうでなければ、この国の医師だけでは成り立たないのが現実である。しかしながら、国によっては同じ医療概念を持っていない場合も少なからずあり、だからこそ、他国で医師免許を持っていてもこの国で3年間の研修を経て医師になる制度を設けている。しかしながら、医師個人の考え方はあり、それを完全に統一する事は不可能」だと優しく言った。

私の友人のお母さんが、外国から来る看護師の研修をする看護師さんである。
多くは東南アジアから来る看護師達で、ここでのやり方を一定期間教えて現場に送り出す仕事であるが、やはり清潔概念が違うと言っていた。
移民大国であるという上で成り立つ医療制度であるからこそ、こういう行き違い的な事が起こりうるのかと思うと、患者である自分が緊張感を持って医療を受ける事が必要なのかと暮らしていてそう思う。

国際都市ではないカーライルでさえ、診療所に行けば医師はほとんどがインド、EU圏か中国人医師である。
英国人医師など数年前から見る事もない。
偏見と捉えられるかもしれないが、私のここでの経験から、インド人医師は楽観的な判断を下す傾向にあると私の実体験から感じる為、内容が深刻になり得る状態の時は、インド人医師を避けて診察を希望する。
こういう体験は、移民大国に住んでいるからこそであると思うと、経験してこそ自分の決意で暮らさねばならない、それが外国で暮らすという事なのだと痛感する。
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