私がまだ、日本で英会話学校に勤めていたときの事。
ミスターDという、サラリーマンのオッサンが生徒として通っていた。
オッサンは仕事で英語が必要ではないが、趣味として長年、英会話に来ていた。

このオッサン、英検1級を持っていることが何よりの自慢だったが、何年も挑戦しているTOEICだけは、どうしても980点以上を取れずに憤慨していた。

ある時、このオッサンが「今週だけは、月曜にレッスンを振り替えてくれ」というので、オッサンの要望通り、レベルの高いクラスに入れた。
このクラスはグループレッスンだったので、生徒が8人ほどいたが、オッサン以外はアメリカ系の外資系会社で、日頃から英語を使って仕事をしている人達ばかりであった。

この人達の中に、オッサンが入ったわけであるが、オッサンはいつも「外資系のやつらは、英語に慣れているだけで、英語を分かっていない」と言うのが口癖であった。
だから、オッサンにしてみれば、「俺の方が英語のレベルは高い。だって英検1級やから」という自信があったに違いない。

ところがレッスンが始まって30分くらいした頃か・・オッサンが怒った顔で教室から出てきた。
「どうされましかた?」と追いかけて聞いたが、オッサンは怒って帰ってしまった。
授業が終わり、その日の担任に話を聞いてみた。

授業が開始してから、オッサンは知っている限りの難しい単語を使って、英語を話していたという。
そこで担任が「ミスターD,沢山の単語を知っているのが素晴らしいと思いますが、その単語は会話分では使用することは不自然です。こちらの言い方の方が自然で、かつどの場面でも使えますよ」と注意した。

するとオッサンは「俺は自然も不自然も、どうだって良い!俺が話したいように話すだけや!」と言って、怒って帰ったそう。

外国人の先生からすれば「ミスターDは、英会話を上達させたくて、ここに来ているんじゃないのか?どうして、間違いを正されたら、あんなに怒るんだい?」と不思議顔。

そら、そうである。
上達したくて来ている生徒に、「それは・・」と言ったらキレられた。
先生にしたら、ワケが分からんやろう・・・。

オッサンにしてみれば、英検1級を持っていることは、何なら外国人講師よりも英語のレベルが高いくらい思っていたかも知れない。
「英検1級の俺の英語が、不自然なハズがない」と思っていたのに、外国人講師にあっさり正された。
オッサンのプライドが傷ついたのである。

こうしてオッサンは、翌週から「俺の英語にとやかく言わない先生がエエ」と言い、結局は、やっかいなオッサンを引き受けてくれる外国人講師に頼んで、そこに入ることになった。

オッサンは永久に、不自然かつオモロ英語を話し続けるのである。
ほんなら・・何で英会話習っとんねんー!!
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