わたしは、この土地に住むようになって最初に感じたのは、時間の感覚が希薄になってゆくのと、不必要な身体の緊張感が抜けてゆくことだった。
そして次第に、私がこの土地を選んだのではなく、この土地に私が選ばれたのかもしれないという想いがわきあがってきたのです。
そんな森の生活を始めた私に突然、こちらに移り住んでから知り会いになった園芸家から、一本の電話が入った。
その彼の声の感じから、いつもと違うことが起きたことを感じとった私は、彼の言うことを正確に聞き取るために、受話器をいつもの聞き耳である左耳に置き換え彼の次の言葉を待った。
(つづく)