ここ最近、先生の調子が悪い。
先生が食事をする場所は台所の窓辺に決まっているのだが、
そこに上がるのに苦労されている。
かりかりかり、っと引っ掻きながら上るのだ。
以前なら、空を飛ぶようにヒラリと音さえ立てずに上っておられたのだが…
昨夜、嫁はんからメールが入った。
『先生の右後ろ足がおかしい。明日、病院へ行く』
あ。あああっ!えらいことだ。俺は昨日の朝、先生の後足を踏んづけてしまっていたのだ。
今朝、帰宅してみると、やっぱりおかしい。
俺が支度している間に、嫁はんが先に病院へ。
急いで俺も自転車を飛ばす。
先生はどうや。
俺のせいか、俺が踏んだせいか
言いながら涙が溢れてきてしまった。
「違う違う。腰の骨が一部分、少し空いてるみたいで、それが神経を圧迫していたんだって」
どうやらそれで、便秘もしてたらしい。
お薬も出て、どうにか一安心のようだ。
先生が我が家に来られてから、早十三年が経つ。
俺の小説では猫又であり、不死の存在だが、現実は違う。
少し痩せてきた。小さくなってきた。軽くなってきた。
でも、その温もりは変わらない。
いつまでも居てほしい。
ごろごろと、喉を鳴らして、『まだまだだな、乱蔵』と笑ってほしい。

