例えば雑誌に全国の美味い物特集などという記事があったとして、

これは美味そうだな、一度は食べてみたいもんだ、と俺が思うのは、何故か山形のものが多い。

或いは、ああ、ここは良いなぁ、一度は行ってみたいなぁと憧れる場所も山形ばかりだ。

何故だ。

山形の何が俺を惹きつけるのだろう。

同僚に山形出身の若い子がいる。ちと、聞いてみた。


「そもそも何処が好きなんすか」


果物は美味いし、山菜も美味いし、米沢牛も美味いし、蕎麦もラーメンも美味いし、肉蕎麦も美味いし、酒も美味い。

だだちゃ豆も米沢牛コロッケも。

なによりも『とん八』に行ってみたいっ!!


「食い物ばっかしじゃないっすか」


い、いやそんなことはないよ。

山の稜線が丸くて優しい。樹氷とかも見てみたい。

結構、花火大会の名所なんだよな。酒田、赤川、山形、大石田、長井。

それとほら、山形は美人が多い。


「そぅっすかねぇ。なぁんも無いところっすよ」


あのな、なぁんも無い所ってのは、視点を変えれば何一つ邪魔されてないってことだよ。

言わば、混じりっ気の無い日本酒みたいなもんだ。飲んでて飽きない。

君な、たまぁに帰っても大好きな景色とか、今でもあるだろ。


「…ありますね」


な。帰るたびに景色が変わる故郷なんて寂しいもんだよ。

故郷ってのは、なぁんも無いぐらいで丁度いいんだよ。





彼は明日、明後日と帰省することに決めたそうです。