感謝してますラブラブ
そして、ごぶさたしてますあせる

これからシリーズで数回に分けて、
このブログで、ある“物語”を紹介していきたいと思います。

この物語の登場人物や設定はすべてフィクションですが、
実際にあった出来事を元に構成されています。

ちょっと笑えて、ちょっと泣ける、不思議な物語です。
シリーズの後半には、恋愛物語に発展するかも!?

では、第一話のはじまり、はじまり・・・


『しあわせ探偵の事件簿』
第一話:「かめ」①


「もう、限界! お願い、助けて・・・」

そんな、誰かに助けを求める想いがどんな言葉になって、パソコンのキーボードを叩き、検索サイトから“ある喫茶店”の存在を知らせる記事に行き当たったのか、清水沙由里はまったく覚えていない。
ただなぜか、「これだ!」という不思議な感覚だけはあった。

その喫茶店の名前は「十夢想家」。「トムソーヤ」と読むらしい。
東京の江戸川区、新小岩にあって、「昔ながらのThe喫茶店って感じ」とか、「なぜか、すごく落ち着く」「美味しいコーヒーを飲ませてくれる」といった情報以外に、沙由里の心をとらえたのが、「常連客には裏メニューがあって、“しあわせ探偵”に問題解決を依頼できる」というものだ。

「長年、私を苦しめ続けていた真犯人が見つかりました」とか、「憎っくき真犯人を見事、逮捕できました」といったものがある中、多くの人が共通して言っているのが「救われた」という言葉。
「私も救われたい・・・」
そんな強い想いがきっと、この記事を引き寄せさせたのだろう。


沙由里は四年制の大学を卒業後、中規模の広告代理店に就職した。
本当は出版社かマスコミ関係の会社に行きたかったのだが、どこからも採用通知を受け取ることができず、最終的にこの会社を選んだ。

希望の進路ではなかったものの、彼女はこの仕事に喜びを見出すことができた。クライアントである企業の魅力を自分の文章で表現し、広告という形にする。それが相手に評価されて契約に結びついたとき、何ものにも代え難い喜びを感じることができたのだ。

文章を考え、書いてまとめることはまったく苦にならない。だから周りからも重宝がられ、多くの仕事を頼まれた。

根が真面目で頑張り屋。これは親からも、学校の先生やクラブの先輩、友達からも言われ続けた言葉で、いつしか自ら「私は根が真面目で頑張り屋なんです」と、自分のことを表現するようになった。
その頑張りが評価されて、沙由里は入社3年目にして係長に抜擢された。

昇進したときは上司も、同期の仲間や後輩たち、そして親もすごく喜んでくれた。もちろん、自分も嬉しい。こんな嬉しいことは生まれて初めてだと思えるくらい、嬉しかった。
でもその喜びが、苦しみに変わるのに、さほど時間はかからなかった。


まず、仕事量が倍以上に増えた。
自分の仕事だけでなく、部下の仕事も手伝わなければならない。それに加え、課長が今まで以上に雑務を押し付けてくるようになった。
仕事が増えれば、それだけ時間もかかる。そこで残業を申請するも、課長は受け付けてくれない。

「今、うちの会社、不景気だから残業代なんて出せないよ。だからってサービス残業を強いると、労働基準監督署がうるさいんだよね。清水も役職者なんだから、その辺のところは自分で考えろ」

こう言われてしまうと、言い返すことができない。
部下に頼むも「残業代が出ないなら、できません」とか「約束があるので、お先に失礼します」と、誰も手伝ってくれない。

こうなると、家に持ち帰って仕事をするしかない。
同期の友達から飲み会に誘われても、仕事が終わらないので断る。それが続くと、もう飲み会には誘われなくなった。

こうなると当然、彼氏との仲もギクシャクしだす。会えないことでお互いにフラストレーションが溜まり、ちょっとしたことなのに言葉がきつくなり、相手を傷つけてしまう。結果、“彼氏の浮気現場を目撃する”という最悪の結果で二人の関係は終わった。

悪いことは重なるもので、課の成績がどんどん下がった。そうなると課長からの指示もきつくなる。それを部下に伝えると、逆に突き上げに合う。まさに“板挟み”だ。

家族に相談するも、父親はたたき上げで会社の役員になった人で、その上、体育会系。二言目には「頑張れ!一生懸命に頑張れば必ずなんとかなる!」としか言わない。母親はそもそも、会社勤めの経験がないに等しいので、話してもチンプンカンプンの返答しか返ってこない。

沙由里の心は徐々に追い詰められていった。

悪いのは私。課長の期待に応えられない私が悪い。

悪いのは私。彼氏が浮気したのは、私がさせたようなもの。

悪いのは私。部下の指導もできない私はリーダーとして失格。

悪いのは私。じゃあ、どうすればいいの?どうすればよかったの?誰か教えて!

自分の心が「もう、限界! お願い、助けて・・・」と叫びを上げたときにネットで十夢想屋の情報に行き着いたのは、「きっと神様に願いが届いたんだ」と思えてならなかった。


つづく・・・