小説「絵慕の夕風」--その4-- |         きんぱこ(^^)v  

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      砂坂を這う蟻  たそがれきんのすけ


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R大学の横に大きなマンションと、その隅にサンチェーンというコンビニがあった。

沖田は1回生のころ、其処で大学で初めてのバイトを始めた。

バイトをしながら、大学の隣にある警察学校の中で、週末になると少年剣道を教えに行っていた。

剣道道場はおおきな体育館だったので、警察官の練習の隅を借りて子供達に指導していた。

たまに警察官と立ち会うこともあった。

警察官の剣道は剣道ではないかもしれない。

竹刀で競り合うと、たまに組み合いになってしまった。

直ぐに竹刀を無視した格闘技になってしまった。

気を失いかけるとバケツの水をかけられた。

やはり剣道というより実践を想定した練習だった。

少年剣道のほうは、子供達には親が付いて来ていた。

殆んどの親は主婦だった。

私は此処ではなぜか「たまちゃん」て呼ばれていた。

ある日、たまちゃんとは何のことかと聞けば、どうも坂東玉三郎のことらしい。

私は色が白く、袴を履いていたので、誰かがそう言い始めたらしい。

ある日サンチェーンでレジをやってると、そのタマちゃんを名付けたとされる女性が店に来た。

彼女は30歳位だったが、道場では冗談も言って、明るい主婦だった。

小柄で髪が長く、私からみればオバチャンだったが年配からみればかわいかったのではないだろうか。

いつも孝輔くんという小学校一年生の男の子を連れてきていた。

「あらっ、タマちゃんじゃないの、いつからバイト始めたの」

といって、絹ごし豆腐をカウンターに置いた。

「あっ中山さん、昨日から始めたんですよ」

「そうなの、あたしこの向かいのマンションに住んでるからこの店に結構来てるのよ、買い物で忘れ物した時だけだけどね」

「それで今日は豆腐なんですね」

「そうなのよ、ここ24時間でしょ、ひょっとして朝までするの?」

「ええ、朝までです」

後ろに客が来た。

「大変ね、頑張ってね」

「はい、ありがとうございます」

と、軽くペコっと頭を下げた。

レジをやっていると、店長が来た。

店長は面長で揉みあげに特長があって、ルパン三世にソックリだった。

もう一人のバイトの先輩は店長のことを案の定「ザ・サード」と呼んでいた。

「沖田なんやなんや、えらい親しそうに話をしてたやないか、だれやぁ」

「何でもないっすよ。ちょっと顔見知りに会っただけですよ」

「ほなら紹介してくれよ」

「なに言ってんっすかぁ」

私は笑ってやりすごした。

ザ・サードは結婚していたはずだ。

二日ほどして、また中山さんが来た。

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小説「絵慕の夕風」--その5--


小説「絵慕の夕風」--その1--


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