ピュッ・・・
「・・・」
「クックックッ・・・」
「・・・」
ピュッ・・・
「あーあ」
「二打罰やぞ」
「なに言うてんねん・・・練習やって・・・なっ・・・そうやろ」
「いんや、二打罰や」
「なーんでやねん、ここはサラッと流すとこやで」
「うーん、どうする?」
「二回も空振りするかぁ普通・・・」
「昼飯かかってるしなぁ」
「サラッとは流されへんで」
「昼飯は大っきいからな」
「なぁに言うてんね、ビンボー学生どもが」
「お前もそうやんけ」
「よっしゃ、一打だけ負けといたろ」
ここは醍醐ゴルフ。
とは言っても、9ホールのショートコース。
一応、打ち上げ打ち下ろし、谷越えがあるが、山の中にあり、客は滅多に来ないので、我々は駐車場にいる受付のアルバイトに見付からないように、八ホール回ると、コッソリと一ホールに戻って、また打ち初めて既に三周目になっていた。
ゴルフなど、やったことがなく、今回二度目で、内容はゴルフではなかった。
球は沢山あった、そのあたりの草むらを探せばコロコロ出てきた。
用は暇遊びで昼食を賭けているだけだ。
今田と徳永がトップを争い、沖田と杉山は、ベッタコ(最下位)にはなるまいと互いのプライドをかけていた。
私(沖田)は、今田のジャッジには不満があったが、仕方なく一打負けてやった。
徳永はいつもニコニコしていて、滅多に怒らない。
杉山は負けず嫌いだ。
しかし、私よりは大人だった。
そう見せかけるタイプだ。
杉山は軽音楽部でリードギターを引く。
女子大にも教えに行っていて、よくもてた。
しかし、黙ってもてるタイプではなくて、自分から口八丁で仕掛けるタイプだ。
今田はボスタイプで仕切ってくるが、繊細な所があった。
徳永は、マイペースでおとなしい性格だが、芯は強かった。
私はといえば、堅実実直で人からも相談を受けるような頼もしい人間・・・ではなかった。
一言で言えば何も考えずに生きていた。
四人は、一応の勝負を終えて、昼食を食べに絵慕に行く事にした。
「俺と徳永が勝ちやから沖田は昼飯奢れよ、杉山はチャラやで」
杉山の横顔を見ると、機嫌がよかった分、私は機嫌が悪かった。
(クソッ、またバイトがんばらなあかん・)
みんなは原チャリに乗って走り出した。
絵慕に着くと、カウンターには浅野さんが入っていた。
浅野さんは、杉山の先輩でドラマーだった。
当時はまだクラブは無くて、スティープガッドやジャコパストリアス、マーカスミラー、スタンリークラークなどの全盛期だった。
杉山は軽音楽でやたらと THE 24TH STREET BAND ばかりを演奏していた。
浅野先輩は個性ある雰囲気を持った人で、いつも人の話を聞いているのか、絵慕で流している音楽を聞いているのかわからない人だった。
しかし、浅野さんは何もせずにもてるタイプで、浅野さんが店に入ると、S女学院の女の子が店に沢山入ってきた。
私はと言うと、いつもはカウンターの隅に陣取って、カウンターに座る常連さんと話をするのが楽しみだった。
今日は杉山がバイトがオフだったので、店の奥の四人がけに座った。
「あーら、今田、久しぶりやね、あんたら、今日はなにしてきたん」
「あっ、どうも」
今田はどうもママが苦手みたいだ。
仕切るタイプだから、ママのように余裕で切り返せる口を持った人への対処が、ぎこちなかった。
「醍醐ゴルフやん、沖田負けで奢りやん、俺ランチ」
「いやーはははランチやてはははエラソーに、オキもランチか?今田と徳さんは、なんえ?」
店でバイトをしている杉山は店に入ると天下を取ったような顔をするがいつもママは笑いながら軽くパンチを入れてその場を捌く。
暫く食べながら話していると、ポツポツとS女学院の連中が入ってきた。
昼は女子大生が入ってくる。
特に今日は浅野さんだったので、みるみるうちに女子大生で満杯になった。
店ではエラソーにする杉山だが、気が利いて、非番でも店を手伝い始めた。
テーブルに残った三人は、食後の煙草とコーヒーを飲みながら、お洒落に着飾って店に入ってくるS女学院の女の子を別世界に住む人間でも見るような感覚で、ボーっと眺めていた。
三人は女には自信がなくて、美人の彼女を持つ杉山を少し羨ましく感じていたが、女の話はしなかった。
「さってと、学校にでも行くか」
今田と徳永が立ち上がった。
「俺は今日は学校ヤンピ(やめる)」
私は、カウンターの端(自分で勝手に決めている特等席)に移動した。
「日曜は、ボーリング行くからな」
「おう、ほなな」
そう言って今田らは出て行った。
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