結局、牛丼を食べなかった。
藍田さんが去ってから、なんとなく立ち上がる気がせず、
そのままぼんやり座っていた。
外回りに出かける時間が迫っていたが、どうにも気が
乗らない。何かが抜けていったような、縛りが無くなった
ような不思議な感じで。
俺、何をしたかったんだっけ。
緑の繁る小山、青い空、うっすらと浮かぶ白い飛行機雲。
そんなものを見ていると、全身の力が抜けてくる。ベンチに
転がって伸びをした、その青い空に吸い込まれるように。
次の日も、俺は屋上にいた。
午前中の外回りでコンビニに寄り、ひとり、おにぎりを
食べながら、空を眺めていた。
今日の空は、薄曇り。自分の心と同じような空模様に、
また可笑しさを感じていた。
「こんにちは、田中さん。」
いつからいたのか、藍田さんは、今日も穏やかな雰囲気だ。
続く