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安良見命「”あの時”・・・。
今から40年ほど前のことでしょうか・・・。
私が最初にやって来た頃から比べると、村の大きな道は固く舗装され、景色もいくらか変わっていましたが・・・。
それでも、人々の心根や生活リズムは昔とあまり変わっていませんでした。
ただ・・・。
その頃、私はなぜか不穏な気配を感じていたのです。
しかし、それが何なのかはわからなかった・・・。
私の目から見て、特に大きな問題はなかったのです。
そんなある日・・・。
なぜか村人達は一斉に村からいなくなります・・・。
そしてすぐに・・・。
今度は大勢の大人達と、大きな機械が何台もやって来ました。
その機械が、次々に村人達の家を壊しはじめたのです。
私は・・・なにが起こっているかもわからずに・・・。
ただ唖然として全てを見つめることしか出来ませんでした・・・。
数ヶ月後・・・。
巨大な水瓶が出来た時に・・・。
私はなにが起こったのかをやっと理解することが出来ました・・・。
”ダム”と呼ばれる巨大な水瓶・・・。
この村から遠く離れた、中央のエリート達が考えた・・・大きな計画でした・・・。
当然・・・そのことについて、私が善悪をつけることはできません・・・。
しかし、私が守り続けてきたこの土地はあっという間に消え去り・・・、村人達のあたたかい絆も皆、バラバラになってしまったのです・・・。
私は非常に意気消沈しましたが・・・。
唯一幸いだったのは、私の小さな社だけは取り壊されずに、森の中へ移転されていたことでした・・・。
この社があれば、おそらく・・・また村人達がここを訪れてくれる・・・。
そしてそれをきっかけに、せめて村人達の心にあたたかい絆を、再び紡いであげることが出来るかもしれない。
私はそんなわずかな希望を持ち、今しばらくはその場所に留まることにしました。
しかし、そこは日当たりが悪く・・・。
当然、もう人間は誰も手入れをしてくれません・・・。
すると次第に・・・。
その場所の気が滞るようになり・・・。
しかも・・・悪いことに・・・。
村を破壊した人間達が引き連れてきた邪神達が社に目をつけ・・・。
自分たちのたまり場として活用する様になったのです・・・。
私は、すぐに身を隠して難を逃れましたが・・・。
集まった邪神達の力の強さに驚きました・・・。
これほどの強い邪気・・・、かつての時代では、ごく限られた権力者にとりつく程度だったのです・・・。
彼らは、私がかつて説得した疫病神や邪神達よりもずっと禍々しい存在で・・・、すでに話しが通じる状態ではありませんでした・・・。
自分たちが愛を見失っていることはもちろん、愛が実在することすら・・・完全に忘却してしまっている様に感じられました・・・。
それ故、もし彼らが、輝く愛を発している私を見つけたのならば・・・すぐに激しく攻撃したくなることでしょう・・・。
彼らにとってもはや愛とは全てキレイ事であり・・・完全に否定されるべきものだからです・・・。
そして、おそらく・・・今の私の力では、彼らの強い邪気に立ち向かうことは出来ず、一度捕まったら無茶苦茶にされてしまう・・・。
もしそうなれば・・・私の魂は激しく傷つけられ・・・私自身も邪神となってしまうかもしれない・・・。
それで、私は非常に悩みました・・・。
この状況でも、まだここに留まるべきか・・・。
それとも・・・もう神界に帰るべきか・・・。
しかし・・・。
私は、あの時・・・約束したのです・・・。
あの少女と・・・村人達と・・・。
やはり・・・。
彼らが、なけなしのお金を集めて作ってくれた社を、私は簡単に捨てることは出来ない・・・。
せめて、この社に村人達の子孫が訪れてくれるのを待ち・・・。
彼らの心に最後の奉仕・・・あたたかい絆を届けてから・・・。
それから立ち去りたいと、そう思いました。
しかし、邪神達の力は強く、この光り輝く体のまま、ここに留まるのは非常に危険でした・・・。
いざとなれば、一時的に彼らの力を弱め、愛の力を人に届けることも出来ますが・・・。
それは最後の力としてとっておきたい・・・。
そこで私は、一つの方法を思いついたのです・・・。
そう・・・。
自らの封印術を組み込んだ面を作り・・・。
それを被ることで愛の輝きを抑え・・・邪神のフリをし続ける・・・という方法でした・・・。」
(つづく)
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