めくった腕には無数の線が走り
生々しい縞模様を作り上げていた。
私はギョッとしたことを悟られまいと
平静を装って作業を進めた。
時々、こういう人に出会う。
手首から肘にかけて
横に走る無数の傷の痕。
記憶がフラッシュバックする。
・・・
「死にたいってわけではないんですよ、
血が出てくるとね、私生きてるんだなぁーって実感できるんです。血を見ると安心するっていうかー」
…なぜ私にそんなことを打ち明けるんだろう
と思った私を見透かしたように彼女は言った。
「先輩なら、なんとなく分かってくれそうな気がしたんです、あはは!」
「死んでも別に構わないなーとも思うんですけど、血が止まらないとヤバいぞって焦ったりして。私変ですよね?あは!」
明るさが痛々しかった。
バイトをやめて以来会っていない。
あの後輩は今どうしているだろう。
・・・
淡々と作業をこなしつつ
目の前の女性と過去の後輩を重ねてしまう。
この人も、死にたいわけではなかったのだろうか。
生きている実感を味わいたかったのだろうか。
そして何がそうさせたのだろうか…
今はもう過去。
古いケロイドは彼女が乗り越えた過去。
薬指には指輪が光る。
「お大事に」
作業を終え、私は心を込めて言う。
彼女に、生きてて良かったと思える経験がたくさん訪れますように。
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しつこいようですがMENTAL HEALTHシリーズはフィクションです。
ただ、私に打ち明けてくれた後輩がいたのは本当です。
リストカットの心理を垣間見て深く考え込みました。
生きている実感がない
もしかするとあの後輩は
このホログラムのような
固定観念が見せる幻影のような
マトリックス世界の本質に
気付いていたのかもしれない。
なんてね。
幸せな生活を送っていることを
心から願います。


