いやさ。

私ってば。

ニューハーフになった当初って、「女らしい」ことを無理にしてた気がする。
例えばいつもオールウェイズ、スカートを履くだとか、ケーキを焼いてみるだとか。
今まで出来なかった「女らしい」ことを取り返すみたいにさ。

まぁほとんどが勘違い行動だったわけだけども。



その中でもとりわけなんつーの?

「女らしい」代表格と言えばやっぱ料理だよークッキンファッキンだよーと思い込んでた私。


当時好きだった彼に初めて料理を作るわよ~って大張り切り。

もうねここぞとばかりにアピらないと。「ザ・家庭的蒼」をさ。


「お前って料理美味いんだな」

「そんなことないよ~」

「照れてカワイイヤツ」

ガバ!!

「あ、ダメよ~」

「いいじゃないかいいじゃないか」

「いや~あぁ~♡ 」

    ↑

なんて展開に持ち込めるはず。たかだか料理を作るだけでだよ?

すげくね?

いきなり場外だよ?場外ホームランだよ?


まぁ当時の私って男として育ってるから料理なんてほとんどしたことなかったし、ママンからも教わってなかったわけ。
でもレシピさえあればちょろいもんよってすかさず本屋に劇走。

レシピのやろ~。このやろ~。




そして。

購入したレシピ本のタイトルは。

じゃん!

「可愛い奥さん 幸せ新婚生活にぴったりレシピ厳選200」。


三十路過ぎの独身女が怒り狂いそうなそのタイトル 。

だいたいいつから嫁気取り?

ちょっとノイ○ーゼ気味のなんらかの中毒患者的タイトル。


この本片手にレースのエプロンつけてイソイソ台所で料理をする私ってばかなり不気味。
春の夜のナイトメアーなわけ。サクラも瞬時に散るっつーの。



さて。

私がチョイスした初めての料理は…

そう!「肉じゃが」。


これだろ?やっぱ。
肉じゃがさえ出来れば料理を制覇したと同じって言うじゃない?

天下取ったって言うじゃない?

IWGPチャンピョン?

料理界のチョモランマ?

万が一途中でビックフットとかと格闘になっても
私には「可愛い奥さん幸せ新婚生活にぴったりレシピ厳選200」がついてるんだから、全然大丈夫。

ビックフットどんとこい!



レシピ通りに材料を買い込んできた私。

もうね、すごい勢いでマニュアル通り。

人生のマニュアルからは半端なく逸脱中なのに。


さ~てレッツスタートクッキングオブジョイトイ♪
じゃがいも剥いて♪にんじん剥いて♪.......

そこらへんまでは良かった。

その後に起こる惨劇を知らずに穏やかな時間を過ごしていた。

まだ子供だった。

When I was a child

If I were a bird




ん?

レシピの中に見慣れない言葉が。

「ダシ汁」。

だしじる?

dashijiru?
読み方変えてもさっぱりわからない。

ダシはなんかわかるけどそれの汁?


当時料理の基本なんて全く知らないわけ。

てにをはどころの騒ぎじゃない。
普通のレシピ本にはダシ汁の説明なんていちいち載ってないわけだ。



「すいません!テレフォンで!!」


思わずライフライン使っちゃった私。

母親に即電話。


「あ?ダシ汁?かつおぶしを熱湯にいれてバッとしてざっとあげるんや。」(大阪のオバちゃんは擬音が非常に多い。)


そうか!カツオ節の野郎か!あの野郎~~。

私やっぱあいつは怪しいって最初から思ってた。

そういえばカツオだしとかいうじゃないか!

なのにあいつってばスーパーでは我関せずみたいな顔してたわけ。

なんてつめたいヤツだ!



速攻カツオ節を捕獲してきた私。

熱湯にどっかんと入れたはいいけどここからどうすればいいかわからない。
とりあえずダシをとるんだから長い間煮込んでおこう。(ホントはすぐにあげなきゃなんない)

グツグツ・・・・・
煮ること30分。

何だかエライ色の煮汁完成。

もうその中からベムとかベラとかベロとか出てきてもなんら不思議じゃない。

沼ですよ。湿地帯。



何の疑いもなく上機嫌でそのままレシピ通りにジャガイモやら肉やらをブチ入れる私。
しばらく煮込んでたら「あく」が浮いてくるじゃない!?

がーーン!!

私そんなの見るの初めてなわけ!
怖い!すんごい状況!

ごっつのキャシイ塚本ならこのまま「ど~~ん!!」って鍋ごと窓から放り投そうな状況。


普通「あく」は丁寧にすくって取っていくんだけど、
鍋から吹き零れそうな「あく」に怖くなった私は煮汁ごと流しにザ~~ッ!!
せっかくとったダシはどうなったんだ私。

気を確かに!私。

お母さんになるんでしょ!?!頑張って!!ヒッヒッフーヒッヒッフー(ラマーズ法



「ふ~~」

予想外のハプニングを乗り切って、やり切った感いっぱいの私。

新たに水を入れてドロドロドロドロ煮ていく。


レシピを見ると調味料を大さじ2とか小さじ1とか書いてる。

ん?

またまた意味不明。
大さじ?小さじ?

「大さじ小さじ」

若手の漫才師?んなわけない。

さじだからスプーンか。まあ適当に2、3杯いれておこうって文字通り適当なサジ加減で調味料をどんどこ加える私。
もうねここまでくるとブードゥーですよ。

黒魔術。


そこからは煮汁がなくなるまで一気に煮込むんだけど、こりゃまた水多く入れすぎてるから煮汁が全然飛ばないわけ。
じゃがいもなんてどんどん煮崩れてなくなっちゃう。

どうしたもんか?

もうどうしようもない。

誰にも止められない。

愛したい、愛せない。



どうなってんだ!!??

「可愛い奥さん幸せ新婚生活にぴったりレシピ厳選200」!!
ちゃんと作ったのに全然肉じゃがになんね~よ!!(←すんごい逆恨み)



結局できあがったのは、肉..........汁?



もう何が何だかわかんない味でさんざん。

やっぱり何事も基本だね。ホント。
今だに肉じゃが作ると思い出すあの肉汁。

それにしても頭にくるのは「可愛い奥さん幸せ新婚生活にぴったりレシピ厳選200」!!
おぼえてらっしゃい!!(出版社もいい迷惑)