太陽の光が、新しい大地を照らしている。
大地の波動が全てを包み込む。
村も人も生まれ変わった。
もう、戻ることは決して無い。
村の外れで二人が立っていた。
阿瑠と昴。
舞衣の姿は、そこには無かった。
「ありがとうございました…」
「私は忘れない…」
手を振るのを止め、昴が言った。
沢山の事を教わった気がする。
そして、大切なものを見つけた。
「昴、お願いがある…」
阿瑠が昴に言った。
「何?」
「笛を吹いて、くれないか…」
昴は、その返事をしなかった。
ただ、阿瑠を見て、微笑んだ。
笛を出し、口に当てた。
すうっと、息を一度だけした。
笛の音が響いた。
昴は、阿瑠の横顔を見ていた。
その視線の先には、真魚がいた。
「美しい…」
幼き頃聞いた、笛の音。
それは、今は亡き母の音色に似ていた。
阿瑠は笛の音を噛みしめながら…
音と風に身を委ねた。
阿瑠の赤い髪が風になびいている。
阿瑠と昴は…
いつまでも、その姿を見ていた。
昴の笛の音が、届いている。
風が、その旋律を運んでいる。
「なぁ、真魚よ…」
嵐が真魚に話しかけた。
「あれで、よかったのか…」
嵐には気になることがあるようだ。
「あれとは何だ…」
真魚が、嵐に聞き直した。
「舞衣の事じゃ…」
「舞衣はどうなるのじゃ…」
「それは、舞衣が決める…」
嵐の問いかけに、真魚が答えた。
「自らで死を選ぶと言うことか…」
嵐はそう受け取った。
「そういう見方も出来る…」
舞衣の身体に宿った古の力。
それは、人の寿命を超える。
「だが、閉ざされた村には、必要かも知れぬ…」
真魚がつぶやいた。
「どういうことじゃ…」
嵐にはどうでも良いことではある。
「いずれまた、新たな血が必要になる…」
「そして、それには…」
「今閉ざされている扉を、開く必要がある…」
「血を繋ぐ為には、絶対だ…」
「それが、神の血族としての使命なのだ…」
真魚が導いた答えだ。
「神の血族…」
嵐が一言つぶやいた。
「珍しいではないか…」
嵐が人のことを気にしている。
嵐も少しずつ変わっている。
そんな嵐を、真魚が見て笑った。
「もうすぐ、大地の仕掛けが動く…」
「ここを基点に…」
「三つの神の力が動き始める…」
「そして、世界が変わっていく…」
真魚が嵐に言った。
「だが、これは始まりに過ぎぬ…」
「この次が、本当の変わり目かも知れぬ…」
「それまでは…」
真魚が言った。
「それは、いつまでのことじゃ…」
嵐が舞衣を想っている。
その運命に思いを寄せている。
「千年か…千五百年か…」
真魚が立ち止まって、空を見上げた。
雲が流れている。
時の流れは止まることは無い。
「その時…世界がまた変わるのか…」
嵐が、同じ空を見て言った。

神の血族 完