「昔は幽霊島って呼ばれていた…」
那海が真魚にそう言った。
「幽霊か…」
その言葉に笑みを浮かべた。
「だけど…船を見た人がいたの…」
「幽霊は船に乗らないでしょ?」
「確かめた人はいないけど…」
那海はそう言った。

誰でも命は惜しい。
危険な場所には近寄らないのが、賢明な選択だ。
「そのうちにわかる…」
真魚は既に手を打っていた。
「奴らの姿が急に消えたのは、そう言う事じゃな…」
嵐が気付いた。
それが、前鬼と後鬼の行方だ。
「誰か、確かめに行ってるの?」
那海は二人の会話からそう考えた。
「変な奴らがいるのじゃ…」
嵐が態とそう言った。
「変な奴?」
「頭に角が生えた変な奴らじゃ…」
「まさか、角って鬼みたいじゃない?」
「そうじゃ、鬼じゃ」
「え!」
那海の言葉が止まった。
「本当の…鬼なの?」
那海は、疑り深い性格だ。
「本当の鬼だ!」
嵐が言い切った。
「神がいるのだ、鬼がおっても不思議ではあるまい…」
自らを、自慢しているのか…
前鬼と後鬼を、確かなものにしているのか…
「それも、そうよね…」
那海が、見たこと無い鬼を、素直に受け入れていた。
「あれっ?」
那海が何かを見つけた。
「弦と千潮?」
那海は、自分の目を疑った。
だが、二人の波動が届いている。
那海にはそれがわかる。
「あれが、弦と千潮なの?」
那海が知っている、弦と千潮ではなかった。
弦はいつもふてくされ、千潮は心を閉ざしていた。
二人の姿は、とても楽しそうであった。
まるで、幼き子供の様であった。
「私と…同じ…」
那海は、その答えを知っていた。
光は全てを照らす。
那海はその事実に、少しだけ嫉妬した。
変わり始めていた。
その光に照らされて。
その事実を受け入れ、変わる自分を楽しんでいた。
「さて、どうしたものかな…」
木の上で前鬼が、頭を悩ましていた。
真魚に仕事を頼まれはしたが、当てがなかった。
真魚が見たと言う、島の光。
その島まで、飛んで来た。
そこは、無人島のようであった。
人の気配は感じられない。
それらしきものも、見当たらなかった。
「これだけの島なのに…なぁ、媼さん…」
広さはそこそこある。
「そうじゃのう…人が住まぬのは…」
「幽霊でも出るのかのう…」
後鬼はそう言って、意識を広げてみた。
「おや…」
「どうした?媼さん!」
後鬼が何かを見つけた。
「何かが…苦しんでおるのか…」
かすかな波動を、後鬼は捉えた。
「行くぞ!」
後鬼はそう言うと木の上を跳んだ。
「何のことじゃ…」
前鬼に、その波動は感じなかった。
「病は、媼さんの管轄だからのう…」
独り言を言いながら、前鬼は後鬼の後を追った。

続く…
-この物語はフィクションであり、史実とは異なります。
実在の人物・団体とは一切関係ありません-