「どうしたら止められるの?」
動き出した心と、見えない方向。
菜月は二つの間で揺れていた。
「精霊の声を聞けばいい…」
真魚が言った。
「出来るの…私にも…」

「睦月はできるのだぞ…」
真魚の言うことは間違ってなかった。
知りたい。
どうしたら村を守れるのか。
菜月は決めた。
「教えて、そのやり方!」
「目を閉じて、心を開く…」
真魚は菜月を見て微笑んだ。
「やってみる!」
菜月は目を閉じて、感じようとした。
「睦月もやってみろ…」
真魚の言葉に睦月も目を閉じた。
真魚が真言を唱えた。
光の輪が発動した。
下から順に廻りは始めた。
それと同時に身体が輝いてく。
「心の奥にその扉はある…」
「心の奥…」
菜月は心の中を進んで行く。
真魚の光が二人を包み込んでいく。
そして、真魚が自らの回路を開き、生命を送り込んだ。
その時…
「これ…」
心の奥にある光を、菜月は見つけた。
「想いを繋げ…」
「繋ぐ…どうやって…」
菜月はその方法が分からなかった。
「全てを捨て、全てを受け入れろ…」
真魚が言った。
「全てを…受け入れる…」
「それが…心を開くことなの…」
菜月は、その意味が分かるような気がした。
今までの自分では、その声が聞こえない。
『あるはずがない』と思っていた。
だけど、それは存在する。
真魚は、二人に生命を注ぎ込んだ。
「あっ!」
菜月が思わず叫んだ。
光が飛び込んでくる。
心の中に。
そして、光が弾けた…
気がつくと、金色の光で満たされていた。
「何…これ…」
身体が自然に動く。
自らの意思では無い。
何かに動かされている。
菜月が両手で何かを掬っている。
それを自らの額の上まで上げた。
「想いを込めて見よ…」
菜月はその想いを捧げた。
動き出した両手が、今度は胸の前で止まる。
光の粒が集まり、菜月の手の上で形を作る。
桃のような形をしたもの。
涙が溢れていた。
菜月はその光を抱きしめた。
菜月の想いを込めた宝の珠。
菜月は、それを抱きしめて泣いていた。
理由も無く涙が溢れてくる。
儚く切ない感情。
その中に全てが存在していた。
生命…
そうかも知れない。
魂…
そうかも知れない。
神…
そうかも知れない。
大いなる慈悲の光が、菜月を包み込んでいた。
儚い生命を抱きしめて、菜月は泣いていた。
「良いものを頂いたな…」
真魚が微笑んだ。
菜月はそれを心にしまった。
舞い降りる光の粒。
その一つ一つが教えてくれる。
大切なもの。
菜月は、言葉では無い会話をしていた。
「おねえちゃん…」
睦月も驚いていた。
「神様っているのね…」
睦月も泣いていた。
大いなる光。
睦月はその中に神を感じていた。
「これぐらいで良かろう…」
真魚がそう言った。
光が帰って行く。
扉が閉じていく。
気がつくと元の世界に戻っていた。
菜月と睦月は抱き合ったまま泣いていた。

続く…
-この物語はフィクションであり、史実とは異なります。
実在の人物・団体とは一切関係ありません-