「お主に聞きたい事がある…」
後鬼は百目鬼に何かを感じている。
「何だ…」
「柊が出会った時、どうして縛られておったのじゃ?」
「うちにはお主がそれほど悪い奴には思えんのじゃ…」
後鬼の感じていた違和感。
百目鬼の波動がそう言っている。
「私は物に纏わり付くものを食らう…」
百目鬼はそう言って笑った。

「なるほど…それで分かったわ!」
後鬼はその一言で全てを理解した。
百目鬼はその美貌で人の心を惹き、金品を奪っていたらしい。
だが、手に入れたかったものは金品ではない。
金品に纏わり付いているものだ。
強欲な金持ちが持つものほど、大きく果てしない。
百目鬼にとってはご馳走というわけだ。
「その欲望をほどきながら食らうのが、私の楽しみだ」
百目鬼は唇を舌で舐めた。
「だが、あのくそ坊主が、私を縛ったのじゃ…」
「思い出すだけでも腹が立つわ!」
百目鬼は一人で怒っている。
「だが、殺さなかった…」
「それが腑に落ちぬ…」
百目鬼の怒りは何十年も続いているようだ。
「殺さなかったのは、感じておったからじゃぞ」
後鬼が百目鬼にそう言った。
「感じておっただと!」
百目鬼は怒りで事実を見失っていた様だ。
「うちが感じたものと同じじゃ」
「お主を悪鬼だと感じる坊主は偽物だと言うことじゃ」
後鬼の言ったことは嘘ではない。
「人とっては金を奪うものは悪い奴だ」
「そこに纏わり付くものなどは見えぬ」
後鬼は百目鬼に説明する。
「そして、纏わり付くものに引き込まれ、身を落として行くのじゃ」
「結果的にお主は人を救っておるのだが…」
「その事に全く気づいておらんのが人じゃ…」
「そんなものか…」
百目鬼は後鬼の説明を聞いてもよく分からないようだ。
「だが、お主が出会った坊主、恐らくただ者ではない…」
「ただの坊主ではないのか!」
百目鬼の坊主に対する憎しみは消えていない。
「お主は言ったではないか、見られているような気がすると…」
「今に始まった事ではあるまい…」
後鬼がそう言って笑った。
「何だと!」
百目鬼は驚きを隠せない。
「見ておったのか…まさか…」
「柊を仕向けたのもあの坊主か!」
「未来を見ていたというのか!」
百目鬼は驚いている。
「柊だけではないぞ…」
「これはうちの勝手な想像じゃがな…」
後鬼は暮れゆく空に目を向けた。
「それで、相談じゃ…」
「相談?」
「お主の百の目、その力を借りたい…」
後鬼は自らの手を開いて見せた。。
「知っておったのか私の事を…」
「面白い…乗りかけた船だ…」
「付き合ってみるか…」
百目鬼はその手を開いた。
手の平に目が一つ輝いていた。

続く…
-この物語はフィクションであり、史実とは異なります。
実在の人物・団体とは一切関係ありません-