森の木々の間から星が見えている。
真魚達は夜まで待った。
そして、行動を起こした。
「こんな山奥に何があるの?」
蓮は山菜を採るときに以外は山に入らない。
しかも、この山は深い。

嵐に乗せて貰わなければ、たどり着ける場所ではなかった。
嵐から降りて少し歩いた。
その嵐も子犬の姿に戻っている。
暗闇を真魚と嵐は苦も無く歩く。
それも、何度となく歩いた所のように自然だ。
蓮は真魚の着物を掴んだまま引きずられる様に歩いた。
「あそこだ…」
真魚が小さな声で言った。
灯りが見えた。
森の木が無くなり、岩肌がむき出しになっている。
「あそこが入り口だ…」
真魚が指さす岩に穴が開いていた。
洞窟のようだ。
見張りの者が二人いる。
だが、二人とも寝ていた。
「あんな所で何をしているの?」
蓮の知識の中にはない。
「黄金を採っている…」
真魚が言った。
「黄金…?」
蓮は金を見たことがない。
その価値がどれほどのものかも知らない。
「父ちゃんはここで黄金を採っているの?」
蓮はすぐその事に気がついた。
「恐らくな…」
真魚はそう考えていた。
蝦夷に来た際、真魚は鉱脈を捜していた。
その一つがこの場所であった。
「朝になれば続々と人が来る」
真魚が蓮に言った。
「その中に父ちゃんがいる…」
蓮に希望の光りがさした。
昼間降った雨が嘘のように星空が広がっている。
虫の音が聞こえる。
空だけを見ていると星が歌っているようだ。
前鬼と後鬼は木の上で相談をしていた。
柊と華に聞かれてはいけない話だ。
「鬼に会わねばならぬと思っておるのじゃが…」
後鬼が前鬼に話を切り出した。
「呪の鍵か…」
前鬼が後鬼に確認する。
「ひとつ気になることがある…」
「細かく言えば二つになるが…」
後鬼が楓の身体を見た際に感じた違和感。
その答えが見つからない。
「真魚殿は言っておった…命に別状はないと…」
「柊に何かを感じ取ったのかも知れん…」
前鬼が考えている。
「うちが感じ取った違和感…真魚殿は分かっていると…」
前鬼の言葉に後鬼が考え込んだ。
「それに、華の力じゃ…」
「覚える力のことか…」
「真魚殿は二人に触れたとき同時に感じたようじゃ…」
前鬼がそれぞれを結びつけていく。
「命を犠牲に願いを叶える丸薬じゃ…」
「それがどうかしたのか…」
「それがおかしいのじゃ…」
後鬼が感じた違和感。
「命を奪う薬が命を救っておった…」
「それは願いが叶わなかったということではないのか…」
前鬼はそう考えた。
「待て…」
前鬼が何かを思い出した。
「華の力が全ての鍵だとすると…」
前鬼の中で何かが繋がり始めた。
「あるかも知れん…」
前鬼はその考えに一人で納得した。
「何があるのじゃ!」
後鬼には見当もつかない。
「父は生きているのじゃ…」
前鬼は後鬼にそう言った。
「それではわからんじゃろ!」
後鬼はだんだん腹が立ってきた。
「媼さんは鬼を捜して話を聞くが良い」
「最初からそう言えば良かろうに…」
後鬼の機嫌はまだ収まらない。
「それは、媼さんにしか出来ぬ仕事じゃ…」
「機嫌を取らぬともそうするわ」
後鬼は前鬼の顔を見なかった。
「この山の何処にいる…」
柊が出会った鬼。
後鬼はその波動を辿り始めた。

続く…
-この物語はフィクションであり、史実とは異なります。
実在の人物・団体とは一切関係ありません-