倭の兵が集まっている。
既に道を切り開く為に山に入っていた。
途中、その部分だけ木が無い開けた場所があった。
田村麻呂はそこに陣を作る様に指示をした。
入り口からここまでの道は狭かった。
馬一頭分の幅しかない。
一度に攻め入る為にはある程度の幅が必要だ。
兵が一列に並ぶことは不利な戦いとなる。
何千人いようが、一人で戦うようなものだ。

「田村麻呂様、この奥に屋敷があります」
偵察の者が様子を見てきた様だ。
「敵の隠れ家か…」
ほぼ間違いはない。
「敵の数は分かるか?」
「それがどうも…外から見た感じでは誰もいない様なのです」
「誰もいない…だと」
そんなはずはない。
誰もいないのではない。
隠れているか、奇襲だ。
田村麻呂はそう考えた。
「敵の数は少ないと見た…」
「だが、油断はするな、おかしな術を使う輩かもしれぬ…」
田村麻呂は有りもしない情報をわざと言った。
「隠れ家かも知れぬ、その屋敷は囲んでおけ…」
田村麻呂はそう指示を与えた。
太陽が真上を過ぎた。
「夜か…」
それもある…
田村麻呂はそう読んでいた。
子供達の無事は確認した。
後鬼達が気になる。
「田村麻呂もあれだけの兵をよく集めたな…」
空の上で嵐が呆れている。
「どうせあの男の命令であろう…」
真魚は帝に呆れている。
「四人でどうにかなるのか?」
嵐が真魚に聞く。
「どうにかするのだ…」
真魚がそう答えた。
「昼間は不利だが…」
「夜ならいけるというのか?」
真魚の言葉を遮るように嵐が言った。
「とにかく時間を作りたい…」
「そのためには夜までは事を起こさぬ方がいい…」
真魚は子供達を気にしている。
あの調子なら、あと一日あれば海まで行ける。
「夜に事が起これば、陽が昇るまでは動けぬ」
「その目で確認するまでは田村麻呂も帰れまい…」
「たとえ、けりがついたとしてもだ…」
真魚が笑っている。
「確かにそうだな」
嵐が納得している。
「それで、いつ起こすのだ…」
嵐が真魚に聞く。
「前鬼と後鬼が上手くやるはずだ…」
「はずとは何だ、決めてないのか?」
嵐がその事に呆れている。
「恐らく決めても無駄だ…」
「無駄とはどういうことだ」
「予期せぬ事が起こるからだ…」
真魚の笑みは確信を意味している。
「予期しているではないか…」
嵐は笑うしかない。
「真魚、その前に何か食わぬか」
「夜までは保たぬ…」
本来の姿に戻った嵐は燃費が悪い。
「いいのか、ご馳走が待っているかも知れぬぞ」
真魚が嵐をからかう。
「それは別腹だ」
嵐は既に限界であった。
「どうせなら皆でどうだ!」
真魚が気を利かす。
「俺は早く食いたいだけだ!」
そう言うと,嵐は目に見えぬ速さで館まで飛んだ。

続く…
-この物語はフィクションであり、史実とは異なります。
実在の人物・団体とは一切関係ありません-