4年前のとある朝。
家を出ると、なにやら奇妙な声が聞こえてきました。
「ミー!ミー!ミー!ミー!!!!」子猫の声です。
その声は裏の工事現場から聞こえてきます。スカートの裾をたくしあげ、パンツ丸出しで工事現場の塀を登り覗いてみると、ちょうど手の平に乗るくらいの小さな黒猫の子猫がうずくまり、痩せ細ったガリガリの体の底から最後の力を振り絞って大きな声で鳴いていました。「ほら!私を見つけて!」といわんばかりに。

私が住んでいたマンションはペット禁止。でも猫ならバレないであろうと、その猫を飼うことに決め、名前は「キッキ」と命名。

ある夜、玄関のチャイムが鳴りました。普段なら、チャイムが鳴っただけで「ウゥ~」と低く唸るキッキですが、その日に限っては、全く唸らず耳をピンと立てています。訪ねてきたのは会社の後輩。私には噛みつき引っかき、黒猫というより黒豹に近いキッキが彼には懐き甘えています。「この人だよ」と言っているかのようでした。その日、私とその彼はお付き合いを始めたのです。

数ヵ月後、玄関のドアを開けた拍子に突然飛び出し、こともあろうか管理人室の前でニャァ~!と鳴いたキッキ。
ヒィィィィーーー!!管理人にバレたらどうしよう!!すぐさまキッキを抱きかかえ部屋に戻るも、今度は小心者の私が、チャイムが鳴る度に「管理人か!?」と怯え「ウゥ~」と唸る日々を送り、最終的には「管理人にバレる前に引っ越してしまえ!」と決意したのです。

ちょうどその頃、タイミング良く彼も引っ越す予定だったので、私はキッキを連れて彼の新居に転がり込むことなり、それがきっかけで、同棲するなら入籍を、ということでトントン拍子に事が進み、私達は結婚する事になりました。

夫は連れ子のキッキを我が子のように溺愛し、キッキも私以上に夫に懐くので、実は連れ子だったのはキッキではなく私の方だったのではないか……?という疑問が頭から離れない今日この頃。

猫の行動のひとつに、縄張りに匂い付けをする「マーキング(Marking)」がありますが、このMarkにOutを付けて「Mark Out」にすると「運命を決定付ける」という意味になります。
猫はMarkingのみならず、Mark Outもしてしまうのです。

「この世には遊びに来ているんだと思っている by cats」

これは大好きな猫Blog「The cat who…」の名フレーズ。
キッキもこの世に遊びに来て、居候先は私の所と決め、ほんの遊びで私の人生をMark Outしたのでしょうか。
その昔は神と崇められ、今では人知を超えた能力を持っていると言われている猫。キッキにもそんな神秘な能力が備わっていると信じて止まない私は、そっとキッキの耳元で『またほんの遊びで宝くじを当てておくれ』と囁き、二度目のMark Outを祈るのです。