サウスダコタ~パインリッヂ居留区オグララ・スーの聖地で過ごした魂の旅日記 PART 1
第七章 暴れ馬とワイルドウーマン
第七章 暴れ馬とワイルドウーマン
パインリッヂ居留区カイル地区に住むホワイト・サンダーは族長を父に待つ厳格なオヤジさんだ。お父様はまだご存命ということなのだが、彼は既に精神的指導者としてカイル地区にいる。年齢はだいたい50歳近くだと思う。
ビジネスとしてラコタホースのトレードを行っているが、時折乗馬のために馬を貸し出す仕事もしている。
ラコタホースは世界でも頭のいい馬として引く手あまたということだが、金持ちといった感じはまるでしない。非常にこじんまりとした小屋で犬(名前:ジャック)と猫二匹と住んでいる。
彼の広大な敷地にはバッファローが7頭ほど飼われているが、それは食用のために飼っているのだとか。つまりスーパーに行って牛肉を飼って食べたことがない・・・のだそうだ。ビジネスでは人のよさそうなオヤジだが、実のところ気難し屋で、いかにも厳格なラコタの男。そんな彼のところで馬に乗った。
まさにあっぱれな晴天で、じりじりと焼きつけるような太陽だ。一応日焼け止めを塗ってホワイト・サンダーを訪ねたのだが、ここでとんだハプニングに見舞われた。
「おいおい、あんた、見た目大人しそうなお姫さまだと思ったが・・・」
暴走した私の馬を追ってきたホワイト・サンダーが呟いた。
最初に乗った馬はレインという雄馬で、とても気が小さくて大人しい馬だった。
厩の周りをうろうろしているうちは良かった。リラックスのために馬の尻、肩、尻、肩というかんじに乗ったまま体を反らしたり曲げたりして触れる体操をしているときも大人しかった。
しかし・・・である。しばらくカッポカッポと軽く走りながら丘を超えたところ、バッファローの柵が近付いた。
あ、バッファローだ~と近付こうと思ってレインの腹を軽く蹴るが止まってしまう。
「手加減しないでしっかり蹴るんだ!」とホワイト・サンダーが言うが、相手が動物なだけについ手加減をしてしまう。これがまずい。
指示がわからなくて馬も迷ってしまう。そのため強めに蹴ったのだが。
異国からの旅人の登場にバッファローが不思議に思ったのか一斉にこちらをみて数頭立ち上がった・・・その時だった。
「おいおい、そっちじゃないよ~~」
手綱を右へと引くがレインは言うことを聞かない。挙げ句の果てに首を振って今きた道を帰るように走り出してしまった。
「手綱を引っ張れ!!」
背後からホワイト・サンダーの声。
しかしフェードアウトしていく。
もちろん思いっきり引っ張ったが、馬の首の力は予想以上に強く、手綱ごと持ってかれてしまった。
しかしフェードアウトしていく。
もちろん思いっきり引っ張ったが、馬の首の力は予想以上に強く、手綱ごと持ってかれてしまった。
ヤバイ・・・
あわてて手から離れた手綱を掴み、足が鐙から外れたのをなんとか修正した。しかし暴走は止まらない。
「松平健って凄い!武豊もぉ~~~!!!これじゃまるでジェットコースターだぁーー!」
とまずはそう思った。
呑気なことを思っている反面、もし障害でも飛び越えることがあったら振り落とされかねないという危険が頭をよぎった。
「きゃぁぁ~」
とりあえず叫んでみた。叫べば助けにきてくれると思ったからだ。しかしこれがいけない。馬が驚いてもっと暴走してしまったのだ。もはや声も出ない・・・。
この間、1分程度だったのだと思う。いろいろなことが頭をよぎった。フラメンコダンサーの強みからか、無意識にバランスを保っていたため落馬しなかっただけ幸いだ。
「たく・・・俺もあんたの見た目で大人しい馬をあてがったのが悪かった。馬があんたのこと怖がってる。とんだワイルドウーマンだな」
なんだって??
馬はよく人の本質を見極める。
ホワイト・サンダーの言う通り、御下げ髪で、彼には私がおとなしそうに見えたのだろう。そんなつもりで髪を縛ってきたわけではないのだが・・・しかし気の弱いレインは私のワイルド性格を見抜いて緊張し怖がってしまったそうだ。
こちらももっと厳しい指示を最初に与えていればよかったのだろうが、なまじっか動物にきつく当たってはかわいそうだという考えから手加減したのも良くなかった。
結局レインの母親で何頭も子馬を生んでいる肝っ玉母馬ペニーに乗り換えた。
ワイルドウーマンとはよく言ってくれたものだ。
翌日にホワイト・サンダーに観光客が立ち入り禁止の場所へと連れていって貰うことになっていた。
その日は髪を全部ほどいていたのだが、すると彼はこう言った。
「そうだ、そのほうがいい。ワイルドウーマン、その方が似合ってる」
だそうだ。
馬に乗っていた時間は正味2~3時間程度ではないかと思う。炎天下で日陰もなく、日焼け止めは効力を発揮せず。しかし犬のジャックは最後までずっと後を追ってきたかわいい奴だ。ゴールデンレトリバーくらい大きな犬だがまだ八か月だという。
「インディアンネームは"スープ"っていうんだ」
とホワイト・サンダー。
おいおい。シャレにならないよそれ。
犬のスープという話はあながち冗談でもない。ラコタ族の伝統儀式にそんな感じのものがあると知って青ざめた。
この話は後のテーマに書くが、ホワイト・サンダーのジャックへの愛情を見る限りスープにされることはないだろう。
ちなみにスー族(ラコタ、ナコタ、ダコタ)はアパッチに次いで凶暴として知られる。もちろん白人がそう言いふらしたのだが、過激な儀式が多いのは確かだ。そして彼等は誇り高い戦士の血筋。 部外者にはなかなか心を開かない。
だが、道すがらホワイト・サンダーはいろいろなことを私に話してくれた。
自生しているハーブの事やセージの種類と使い方、景色のこと、動物のことなど。
ある種ビジネス範疇外のスピリチュアリティの話では言葉を濁すことも多かったが、私が真剣にラコタ語で知っている単語について尋ねたりしていると、色々とラコタについて話し始めてくれた。
厳格な彼はランチタイムが終わってから、その重い口を少しずつ緩めていってくれた。
先に待っていた用事を遅らせてまで私のためにドラムを叩いて歌を歌ってくれたり、彼の敷地内にあるスウェットロッジの小屋にも連れていってくれた。
彼は翌日居留区で観光客が入れない場所などへと連れていってくれたが、それはラコタの歴史と現実の入り交じった複雑な一日だった。しかしそこで私はホワイト・サンダーが誇り高きラコタの男であると確信した。
*サウスダコタ~パインリッヂ居留区オグララ・スーの聖地で過ごした魂の旅日記 PART 1は2006年に別のブログに掲載していたものをアメーバ移行に伴い、再編集しておとどけしています。
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