今から思えばの話なのですが、浜学園在籍時に私は大きな勘違いをしていたことがあります。浜学園や希学園を含めた各大手塾の一部カリキュラムや模試内容が過度な先取りになっていたり、教材の難易度を過度に上げていたり、受講生のレベルに全くマッチしていなかったり、そういった問題は、塾側の怠慢にあると思っていました。生徒のレベルを正確に把握し、より的確な教材を提供する責務を果たさない大手塾に疑問を感じていました。しかし、それは少し捉え方が間違っていたなぁと、浜学園を出てから気付かされました。
どういうことか?
保護者の意見をダイレクトに受け取る機会が劇的に増えたからこそ分かったことなのですが、大手塾は
保護者のニーズを的確に捉え、純粋にただそれに応えているだけ
だと痛感したのです。
関西の中学受験保護者(特に母親)の多くは、学習内容やカリキュラムを正確に把握せず、とにかく周りよりも優位性を保ちたいという欲望を前面に出し、
「もっと難しいことをやってほしい」
「もっと先取りをしてほしい」
という思いをだんだん強く持つようになります。他の人とは違うことをやっている、と思うことで「安心」と「優越感」を得たいわけです。
大手塾は、「生徒数を増やす」ことを最も重要視するわけですから、低レベルであったとしてもそういったニーズを無視するわけにはいきません。だから、適切な難易度でないと分かっていても、保護者のニーズを考慮して、致し方なく問題のあるカリキュラムを提供するに至っていることが多いのです。
そういえば、浜学園在籍時にも、それをにおわせるヒントみたいな出来事はありました。
私が作った算数のテキストのページ数を削減するため、1ページに1問掲載としていたところを、1ページに3問ずつ掲載することでページ数を抑え、コンパクトなテキストにしました。そうすると、何人かの保護者から、
「テキストが薄くなった。こんな内容で大丈夫なのか?」
という、クレームが飛んできたのです。
もう一度確認しますと、私がしたことは
1ページに1問掲載し余白を多く取りページ数が多くなっていたところを、1ページに3問掲載し余白を最小限にしページ数を削減した
だけです。内容、質、問題量は一切変わっていません。変わったのは、紙の量だけです。
しかし保護者は、紙の量が減ったことで「不安」を覚えるようです。保護者のニーズとは、その程度のものだったりします。
しかし大手塾は、保護者のニーズが全てですから、そのニーズを無視するわけにはいかず、子供が効率よく成績を伸ばすことよりも、保護者に「安心感」をいかにして与えるか、ということばかりに気がいってしまいます。その結果、無駄の多い講座やカリキュラムがどんどん誕生してしまうわけです。
基礎が不安定にも関わらず、親は子供に難しいことをやらせたがります。大は小を兼ねる理論で、難しいことをやらせることが子供の学力向上に寄与するという間違った思い込みを拭いさることができません。今やらせていることに意味がある、と思い込み安心を得る「実感」が欲しいからです。本当に意味があることは「実感」を伴いにくいものなのですが、どうしても「実感」を求めて無意味なニーズが生まれる、そんな悪循環を発症するのです。
当前のことですが、優秀な子供の親は、そのあたりの認識が極めて正確です。
感覚や感情に流されず、冷静に客観的に物事を捉える能力が高いです。
やはり、我が子を優秀に育てたいのであれば、その親が相応に優秀であらねばならないのではないでしょうか。
この真実を、大手塾は思ってはいても絶対にハッキリと言いません。
なぜなら、大手塾にとって、保護者のニーズがすべてだからです。保護者という顧客の機嫌を損ねては大変です。
大手塾に入塾させれば、安心感が得られる、成績上昇も得られる、何もかも良いこと尽くしであると、いかにして保護者に思い込ませることが出来るか、が大手塾にとっては最大のミッションなのです。
このようにして真実がどんどん隠蔽され、表面的な価値が世の中に蔓延していきます。
我々は、そういった大手塾の流れに巻き込まれることなく、保護者の表面的なニーズに振り回されることなく、「正しい」ことを「効率よく」成し遂げていくことをしっかりと提示して、これからも業務にあたっていきたいと思っています。
■■算数ソムリエ■■
P.S.
次回記事で、新参考書出版の告知をいたします。
タイトルは
「灘中開成中筑駒中受験生が必ず解いておくべき算数101問」
に決定しました。
かなり内容の濃い一冊となります。トップレベルを目指す受験生の必須バイブル書となるでしょう。
発売まで、あと1か月ほどかかりますが、どうぞお楽しみに!