この時期になると、本命校受験のシミュレーション、練習の場として、いわゆる「前受験」でどの学校を受験するか頭を悩ます保護者の方が多くおられます。
関西の中学受験においては「愛光中」「函館ラサール中」「北嶺中」「海陽中」「岡山中」「岡山白陵中」などが挙げられるでしょう。
大手塾によっては、この「前受験」を激しく斡旋するところがあります。練習を積むという意味で奨励する限りにおいては良いのですが、最近は実績が欲しいがあまり、「前受験は最低必ず2〜3校は受けよう。でないと本番の合格率が下がるデータが出ている‼️」などと、半分脅しのような言い回しで前受験を強引に誘導する風潮が見え始めています。
私は、この動きについては、受験倫理なるものがあるとするならばそれに反れているのではないかと思います。
近年、企業の社会的責任(CSR)についてよく言われます。
※企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)とは、企業が利益を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任をもち、あらゆるステークホルダー(利害関係者:消費者、投資家等、及び社会全体)からの要求に対して適切な意思決定をすること。
大手塾ともなれば、確かに株式会社であればなおさら実績を追求し会社の利益追求に躍起になるのは当然のことと思いますが、それが例えば消費者に対する洗脳を伴うものであったり、必ずしも適切でない誘導を強引に行ったり、といったことは倫理観に基づいて控えるべきところは控える配慮があるべきではないかと私は思います。
講師、事務員含めた従業員が自分の意志に反して「消費者に前受験2〜3校必ず受けるよう誘導」を義務化されるようなことがもしあるとするならば、それは大問題です。
例えば一人の生徒に対して「○○くんはたくさん練習を積んだ上で本番を迎えた方が良いと思うから、前受験2校は必ずしておこう」という導きがあるのは全然問題ないと思うのです。しかし、どんな生徒でも必ず2〜3校受験するように誘導しなければならない、という強要を従業員に課すまでになると、それは組織のマニュアルの暴走ではないでしょうか。「前受験最低2校受験するよう誘導すること」といった誓約書を講師や事務員に書かせるなどという話を聞きますが、明らかに行き過ぎたものではないでしょうか。
色々と述べましたが、私は個人的には「前受験」は1回ぐらいは受けておいても良いのかなと思います。ですが、それが必ずしも誰しもにとって本番を優位に動かす要素になるわけではなく、むしろ多く受ければ受けるほど、受験直前期の負担を増幅させ悪影響に繋がる、という様に考えます。しかし、生徒によっては「前受験」の機会を多く持った方が気持ちが乗るタイプの生徒もいるかもしれませんし、逆に「前受験」無し「ぶっつけ本番」が性分に合っているタイプの生徒もいますので、本人それぞれの特徴に合わせた選択を、保護者と身近な先生の意見に基づいて決めるのが一番良いのではないかと思います。
一度きりの中学受験、大きな組織のロジックに振り回されることのない悔い無き選択をして頂きたいと切に願います。
■■算数ソムリエ■■