ホスピスで音楽ボランティアをしませんか?と声がかかったのは友人のつてであった。

 

公に募集しているわけではなく、

たまたま前任の方がお引越しされて後任を探しているタイミングで、私に声がかかった。

 

末期癌病棟には個室が12床あり、患者さんご自身が

自分の命が長くないことを自覚した上で入院されてくる。

平均、入ってから旅立たれるまで1か月程だと思う。

 

皆さん歩行器や車いす、あるいはベッドを看護婦さんに押されて、

ピアノのあるサロンまで来られる。

 

ボランティアに入る前に面接もあり、

本来ならばピアノ演奏だけということで入ったボランティアだった。

 

しかしある日ある患者さんに

「お姉さんの声が聞きたいんです。やっぱり楽器じゃなくて人の声が一番伝わるんです。

歌ってください」

と言われ、リクエストされた五輪真弓の「恋人よ」を歌った。

 

五輪真弓の「恋人よ」は、生まれてこの方一度も人前で歌ったことはない。

かろうじてサビを知っている位だった。

 

でも目の前にいる人の命が長くないこと、

もしかしたらこれが患者さんのこれから叶えられる願いの数少ない願いの一つになるのかもしれない、

そう思うと、その気持ちを全力で受け止めてあげたいと思わずにいられなかった。

 

ピアノの裏にあるスペースで自分のスマホからyou tube で曲を再生して耳コピし、

「歌謡曲の全て」(いわゆる赤本)

で、歌詞、伴奏をつけながら精一杯歌い演奏させていただいた。

 

患者さんは涙を流しながら、ありがとう、ありがとう、と言ってくださった。

それからしばらくして患者さんは天国へ旅立った。

 

 

それから私は患者さんのリクエストにはできる限り応えたいと思うようになった。

私ができることなんて小さなことだけれど、

もしかしたら患者さんにとっては大きなことなのかもしれない。

 

リクエストされる曲は、患者さんにとって人生で一番、幸せな時代だったんだと思われる

思い出の曲だと思う。

童謡や昭和のヒット曲などが多い。

 

また高齢の患者さんのお誕生日に子供や孫達が集まっていると思われる時もあった。

私が「みんなでこれから、ハッピーバースデーの曲を歌いましょう!」

とお声かけさせていただき、

ピアノで前奏から入り、全員でハッピーバースデーの曲を歌った。

 

患者さんにとって人生最後の誕生日が、多くの愛する人にお祝いされて

幸せな一日であることを願った。

 

ホスピスのボランティアは私にとって得るものの方が多い。

 

人間には、支えるものと支えられるものという二種類の区分があるわけではない。

どんな人も、支える時もあれば、支えられる時もある。

 

本当に頑張って生きてきたこれまでの人生の最後の時間を

一緒に過ごさせていただくことは、私にとってとても学びになることで、

こうした活動ができることをありがたく思う。

 

現在まだコロナ自粛要請中だが、解除されたら復帰するつもりでいる。