前回の話

リカティ伝説殺人事件を最初から読む

 

12時、昼食の時間がやってきた。

 

食堂にM田、加山、和歌子、翔子が集った。

 

「あれ?ちか子さんは?」

 

不安そうな顔をするM田。

 

「ちか子さん、食欲がないみたいなの」

 

料理を配膳中の莉多子が説明する。

 

「ちか子さんは繊細だから、事件のことを知ってショックを受けてしまったのかもしれないですね」

 

M田はちか子のことが心配になった。

あとで、何か食べ物を部屋に持っていってあげよう。

 

「そういえば、クス男さんも来ないわね」

 

翔子がつぶやく。

 

M田は、先ほどクス男と翔子がハブの部屋に入っていたことを思い出し、ガクガクと震えた。

 

配膳を終えた莉多子が席についた。

 

「クス男さん、マイペースだから……。そのうち来ると思うから、先にいただきましょう」

 

重々しい空気の中、昼食がスタートした。

 

M田は隣の加山に、そっと尋ねた。

 

「加山さん、ハブさんから時計を取り戻したんですね」

 

葉山は照れ笑いした。

 

「よくお気づきで!あのままハブが腕にハメていたら、警察に押収されてしまうと思いまして。警察が来る前に取り返しておきたかったんです」

 

「ちなみに、盗まれた20万円は取り返せましたか?」

 

葉山の目が一瞬、泳いだ。

 

「・・・いや、お金は返ってきませんよ」

 

「それは残念ですね。20万円は大金なのに」

 

「いやぁ。私にとってははした金ですよ」

 

「そう言えるなんて、羨ましい」

 

すると、食堂に青い顔をしたちか子がやってきた。

 

「まぁ、ちか子さん、体調はどう?」

 

「あまりよくないです。なんだか、2階から変なニオイがして。余計に気持ち悪くて・・・」

 

「変なニオイですって?」

 

「ええ」

 

「なんだか嫌な予感がするわ・・・」

 

莉多子が階段を駆け上がると、確かに異臭が鼻についた。

不安そうに、階下から見上げる参加者たち。

 

「なんだか、この先に行くのは危険な気がするわ。そうだ!管理人室に防護服があったんだった!」

 

莉多子が管理人室の倉庫を捜索すると、防護服が3着見つかった。

 

 

「防護服があるなんてスゴイですね!」

 

思わず感嘆の声を上げるM田。

 

「今、未知のウイルスが蔓延しているので、その対策として置いてあるみたい。防護服は3着あるので、誰か私と一緒に来てくれる人いるかしら?」

 

莉多子の問いかけに、すぐさま反応したのは翔子だった。

 

「私、行きます!」

 

「では、私も!」

 

M田もつられて手を挙げた。

本当は怖いし、行きたくない・・・。

 

でも、ちか子さんにいいところを見せるチャンスだ!

 

「ありがとう、翔子さん、カモさん。では、今すぐ着替えて。他のみなさんは下で待っていてね」

 

防護服姿の3人が、2階へ向かう。

 

「たぶん、クス男の部屋からだと思う」と、翔子。

 

「そうね。もしかするとクス男さんは気分が悪くなって倒れているのかもしれないわね」

 

莉多子もうなずく。

 

「クス男さん、中にいるの?大丈夫?」

 

ドアを叩くが反応がない。

 

翔子がドアノブを回すと、鍵はかかっておらずドアはスーッと開いた。

 

部屋に入る3人。

 

「誰もいないわ」

 

莉多子はすぐさま窓を開けて換気をした。

 

翔子は部屋をキョロキョロ見渡すと、ハッと気づいた。

 

「もしかして、バスルームかも!」

 

しかし、バスルームのドアを開けようとしても、鍵がかかっている。

 

「莉多子さん、鍵がかかっているわ」

 

「もうこうなったら、無理矢理開けるしかないわね」

 

「鍵穴をドライバーでこじ開ければ、開くかもしれません!」

 

早速管理人室へ行き、ドライバーを持ってきたM田。

 

ドライバーを鍵穴にツッコんでガチャガチャ回すと、鍵がカチャリと外れる音がした。

 

ドアを開けると、床にクス男が倒れていた。

 

「キャーーー!!クス男さん!」

 

悲鳴を上げる莉多子。

 

翔子はクス男をバスルームから引っ張り出すと、

防護服のマスクを外して、すぐさま人工呼吸を始めた。

 

しかし、クス男はピクリとも動かない。

翔子は何度も人工呼吸を試みたが、やがて唇を離した。

 

「ダメだわ。もう助からない・・・」

 

「なんてこと。カブと貴子さんに続いてクス男まで・・・」

 

へなへなと床に崩れ落ちる莉多子。

 

翔子はバスルームにあるものが落ちていることに気づいた。

それは、部屋の鍵だった。

 

莉多子がハッとする。

 

「これは、カブの部屋の鍵だわ・・・」

 

「もしかして、事件の真犯人はクス男で、みんなにバレる前に自殺を図ったのかしら」

 

翔子がポツリとつぶやいた。

 

しかし、M田は違和感を抱いていた。

クス男にはもっと、したたかな印象があったからだ。

あの男が、自殺するはずない!

 

ふと、クス男を見やると、手に何か握っているのが見えた。

 

「莉多子さん、これ・・・」

 

見ると、手には婚活かるたを握っていた。

 

「まぁ、なんてこと!」

 

かるたの札を見て、驚く莉多子。

 

クス男が握っていたのは「う」の取り札だった。

 

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