結婚相談所から申し込んだ11歳歳上の力石徹に似た方と結婚前提のお付き合いとなり、キスの依頼は却下して抱擁だけ致す。
翌週土曜日はまた18時に銀座で、
最近は専らマロニエゲートで待ち合わせである。
厄介なのは、力石が自分で指定した時間より、
下手すると毎回20分程遅れて来ると言う事。
それが喫茶店であれば何の問題も無いが、
彼は車でのんびりやってくる為、私はマロニエゲートの中にあるデカい時計の前で立ったまま待つ事になる。
しかし遅れてくるクセに、何故時計の前を集合場所と致すのか、今日こそはピリリと嫌味でも言ってやろうかと鼻息荒く携帯を睨む。
彼が車で到着すると、着いたよとiMessageが届き、それで私が建物の外に出てそのまま力石の車に乗り込む。
もう8月も終わろうとしているが、まだ夏の夕暮れは暑く、車の中は力石がつけた制汗剤なのかオリエンタルな良い香りがする。
そして、やぁと笑顔で見つめてくる彼の顔を見ると何だか照れたような気分になって文句など1つも出てこなくなる。
長い42年の人生のうちのたった20分だ、お主の為に使おうかと決める。
そこからのんびりとした運転で、このままコレド室町に行こうとなり、力石が気に入っておると言う、西利という漬物屋の暖簾をくぐる。そして店名を何と読むかで揉める。
そこは入口で商品を販売しておるが、奥はレストランとなっており、力石の案内でカウンター席に2人で座り、漬物定食を力石が頼むから私も真似をする。
しかし今見たら、コロナのせいか店は閉店しておりガッカリして何だか泣けてくる。コロナの感染を広げているのは本当に飲食店なのか。尾身会長が、国民の為に寝ずに働き広尾に億ションを買った話なら漏れ聞いておるのだが。
それから力石とスタバでお茶をした後、恵比寿まで車で送ってくれるが、またキスの話が出たらどうしようかと思い悩む。
そして、自宅マンションの下に到着した時、
力石は車を停めながら、まだキスは駄目なの?とやはり聞いてきた。
私は笑いながら黙って首を左右に振り、力石の目の前に右手を差し出す。
すると力石は半笑いで、諦めたように緩く私の手を握って握手をしてきたから、
その手を優しく持ち上げると、
私は、彼の手の甲にそっと唇を近付けてキスをした。
