特別企画 番外編番外 「攻める②」 | 能meets

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観世流能楽師 林本大による
わかりにくいからこそ面白い能の、わかりやすく「濃密」な講座。
「能が皆さまに会いに行く」をモットーに大阪・東京・高知・栃木、他(福岡、長崎、札幌)で開催。
全国展開中!
スタッフ運営。

すみません、前回から少し空いてしまいました。

 

杉江能楽堂事務局の伊地知さんとの対談を…と、思っていましたが、予定を変えて、やはり道具の記事を書き進めることになりました。

 

予め先生からいただいていた道具の写真と、それによるテーマが残り2、3あります。

どのテーマが次の記事かな?

と楽しみにしていたスタッフの元に先生から久しぶりの原稿が…

 

「お!きたきた!」と楽しみに見ると…

 

「攻める」をテーマにつらつらと書かれてたものでした。

 

あれ?

え??

あ、前回送っていただいたものを間違って再送…?

違います。

新しい原稿です。

 

先生…

「攻める」はもう…とお伝えすると

 

「あれ?書きましたか?」と。

どうしましょう。

 

ちょっと不安になりました…お疲れでなければいいんですが。

 

ただ、その原稿がとても面白かったので、ここにそのいただいた原稿をそのまま載せたいと思います。

 

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「打杖」

 

怨霊や鬼など、それを携えている者の内面からの攻撃を象徴しているように思います。

嫉妬や絶望、そこから生まれる恨み、苦しみ。

ですから

あくまで私の意見ですが、この打杖を「武器」として捉えると、あまり世界が広がらず「面白くない」のです。

龍神が持つとこれは不思議な霊力や神力となり、雨を降らせたり、国土を守る能力を発揮しますね。

 

赤と紺があり、曲によってはどちらを持つか決まっています。

「きしわだ杉江能」で私が演じる予定の「安達原 白頭 急進之出」は、後シテはこのどちらでもない色の打杖を使います。

私は入門すぐにある大先輩から、「君は家の子ではないから、道具を何も持っていないだろう」と、赤の打杖をいただきました。

これは今でも大切に使わせていただいております。

 

 

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「太刀」

 

これは皆さんよくご存じかと思います。

能には平家物語を扱った曲や、戦物語、鬼退治の話などが多く、太刀は頻繁に使用されます。それだけに痛みやすく、また意外と折れやすいので充分に気を付けます。

「えっ!じゃあ太刀を敵と合わせた時にすぐ折れるのでは?」

と疑問に思われるかもしれませんが、それはご心配なく。

 

能では、いわゆるチャンバラのシーンでも、太刀はお互いに「寸止め」をして、本当に刀同士が合わせる事はありません。

これは一度皆様その曲をご覧になって確かめてください。

 

「土蜘蛛」では、最後にワキの武者達が蜘蛛を退治して仕留める時も、絶対に蜘蛛の体に刀は触れません。

だから、刀同士が当たって「カキーン」と音が鳴る事もなければ、鬼を退治してその体を刺す「ブスッ!」という効果音がなるわけでもなし。

皆さんには違和感があるかもしれませんが、能の世界ではこれは原則です。

そうする理由は演技者の解釈も色々でしょうが、その一つには、

「もっと大事な事があるから、わざと当てない」

のではないかといつも考えます。

 

能は総じて「マイナス」で演技をする芸能です。

う~ん、マイナスというと、本当にマイナスイメージですから、ここでは「陰陽」の「陰」としておきましょうか。

 

演じるポイントというか、力点は、例えば「遠くの山を見る」時には、見る方向と真逆に同じ距離だけ意識が引かれています。

また、弓で例えると分かりやすいかもしれませんが、弓をキリキリとしっかり引いた所が一番充実していて、動作が完成されるべき「放つ」時には、もうそのほとんどのエネルギーを使っているのですね。

刀で一太刀合わせる所作も、太刀を合わせる箇所に執着するよりも、狙いを定めて刀を振り上げる所、つまり陰の部分に気持ちがしっかり入るべきで、それを演者に気を付けさせる為に、「太刀を合わせない」という教えになっているのではないかと、私は思います。


 

 

以上が先生からいただいた原稿です。

二回目ですが…また違う面白さがあります。

 

二回目の「攻める」の原稿が来たことには正直驚きました。

でも、原稿を読んでみて「せっかく書いていただいた」からだけではなく、前回とまた違う着想やエピソードを交えて書いていただいているので是非ともご紹介したいと思いました。

 

そして、同時に能meetsの講座が再会した時にネタ切れなんて不安は先生にはないんだと頼もしく思いました!

まだまだ先生の中から伝えたいという気持ちが溢れているんだなぁと。同じテーマでも同じ曲でも、きっとまたその時の状況、そこまでの経験、そして来てくださった方々の空気で色々工夫して伝えて下さるんでしょうね。だからこそ、早く「生」の講座を…と思いました。

 

前回の「攻める」の記事も参考にしてくださいませ。