筆者はこれまで、戦時下のドイツ人の宣教師の活躍はカトリックがほとんどで、プロテスタントはほとんどいないと述べてきた。

 

そんな中、神戸はプロテスタントが主体であったという情報に接した。その中心は現在は神戸市灘区にある「ドイツ語プロテスタント教会 神戸大阪」で、神戸唯一のドイツ人の教会である。建物は今も英語系の神戸ユニオン教会堂と共有で使用している。

 

現在は灘区にあるが、1929年 三宮から新神戸に向かう坂の途中にW.M.ヴォーリズ設計により、ゴシックスタイルの教会が建てられた。阪神・淡路大震災で被害を受けた後、教会は現在の灘区に移る。

 

そして被害を受けた建物は、老舗ベーカリー フロイントリープが買い取り、改装して、ジャーマンベーカリーの店舗及びカフェとして活用されている。同じドイツ人としての連帯であろうか。

 

現在カフェ フロインドリーブ 本店の旧ユニオン教会。(ウィキペディアアKobe Union Church02n3200.jpg)

 

ジャーマンベーカリーの創始者ハインリヒ・フロイントリープは中国の青島でパン屋を開店したが、第一次世界大戦勃発で徴兵され捕虜となり、日本に来て、終戦後も留まり店を開いた。彼の私邸は現在、日本第一号の登録有形文化財を使ったスターバックスコーヒーになっている。

 

スターバックス・コーヒー 神戸北野異人館店

 

話を戻すとドイツ語プロテスタント教会の創設者エミール・シラーは1931年帰国し、後任者エゴン・ヘッセルは1933(昭和8)年ドイツ本国で樹立したヒトラー内閣に反対し、1936(昭和11)年に所属の東亜伝道会から罷免される。

 

そして次に就任したのがリーマー・ヘニングである。彼が苦難の第二次世界大戦中の教会を率いたのであった。本編では彼の足跡を追うものである。

 

教会の創立150周年ビデオからは次のようなことが分かる。

 

日米の関係が悪化すると、米英の関係者が日本を去る。するとヘニングがドイツ語のみではなく、英語のミサも行うようになる。

 

1940年、ポーランドからの杉原千畝の発行したビザによるユダヤ難民を教会で受け入れようとしたが、ドイツ信徒の反対で実現しなかった。教会のドイツ人らの多くはナチスの体制に追従し支持していた。

→教会が自ら、あまり名誉ではないことも公表している。
 

日本の敗戦色が濃厚となった1944年の、クリスマス礼拝の参加者のメモが映し出される。 

それによると日本人17人、ドイツ人5人、ロシア人6人、スイス人6人、イギリス、アメリカ人(各2人)の計45人であった。
→国籍、敵味方を超えた参加者である。ロシア人はソ連から亡命してきた白系ロシア人で無国籍者であろう。敵国イギリス人、アメリカ人でも高齢などを理由に特別に日本に滞在を許される人がいた。日本の当局はアメリカ人の参列は駄目であると告げていたようだ。

 

1946年8月7日付けGHQの中に次のような記録が残る。これは今回筆者が見つけた史料である。おそらく未公表であろう。

 

「本国送還の際の荷物の許容範囲について

ドイツ人リーマー・ヘニング(Liemar Henning)博士(原文はDr)からの手紙の貴部の関連パートである。彼はドイツ送還への申し込みをしたが、その際所持できる荷物についての(制限超過の)許可を求めてきた。

 

要求はイギリス軍の神戸事務所との連絡にあたるスイス人、ウィリアム・ヘルツォーグを経由して届けられた。

それによると、ヘニング牧師は戦争中を通じて、一貫して司祭に徹した。そして国籍に関わらず助けを必要とする人に手を差し伸べた。

特にグァム島から神戸に連れて来られ、抑留されたアメリカ人達のために、彼が書籍を購入した際には、ヘニングの助け無しには成し得なかった」

 

→スイス人のヘルツォーグは戦争中は中立国スイス神戸領事館の館員で、敵国(アメリカ)の利益代表国として、神戸に抑留されたアメリカ人を訪問し、要望を聞いたのであろう。神戸ユニオン教会でもあった教会には英語の書物も沢山あり、ヘルツォーグはそれらをヘルツォーグに提供したのであろうか。

戦時下においても宗教家として、国籍を超えた人道的活動を広くしたことはここからも読み取れる。

 

終戦時のヘルツォーグの住所は京都であった。彼は神戸だけではなく、西日本管区の責任者であった。

ヘニング牧師は帰国の申し込みをしたと、先の書類に書かれているが、GHQが作成した本国送還者リストには名前が見つからない。

また手紙の時点では、送還者に許させる荷物の限度は決まっていないとGHQの書類には書かれているが、実際はとても制限されていた。まさか荷物の制限ゆえに、牧師は帰国を思いとどまり、日本に留まったという事はないと思うが。

 

以上

 

参考資料

・創立150周年ビデオ

・ドイツ系プロテスタント教会による日本伝道と関西

―普及福音新教伝道会の宣教師エミール・シラーを中心に―(林祐一郎)

・憲政資料室 CPC 20401  Henning, Dr. Liemar

 

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