ベルギーの港町、アントワープ
ここにあるノートルダム大聖堂は日本人には
身近な教会とも言えます。

「フランダースの犬」って聞いたことありますか?

とある小さな村に、ネロという少年が、足の不自由な祖父とともに暮らしていました。貧しい暮らしを強いられているものの、ミルクの配達をしながら生計を立てています。

そんな彼のそばに常にいるのが、パトラッシュという老犬です。人間にこき使われて捨てられていたところを、ネロと祖父に拾われ、大切に飼われていました。

またネロは絵の才能があり、「いつか画家になりたい」と考えています。そんな彼の夢は、「アントワープの大聖堂に飾られたルーベンスの絵画をこの目で見たい」というもの。しかしそのためには高い拝観料が必要で、彼にとっては叶わぬものでした。

ネロは風車小屋の一人娘であるアロアと親しくしていましたが、彼女の父親は貧しいネロのことをよく思っていません。そんななか、ある日風車小屋の敷地内で火事が発生すると、ネロはその濡れ衣を着せられてしまうのです。

また同時期に祖父が亡くなり、住んでいた家からも追い出されてしまいました。さらに応募をしていた絵画コンクールも落選。すべてを失ったネロは、絶望の淵に落とされることになったのです。

吹雪のなかを歩くネロ。大金の入った財布を拾います。それは風車小屋の一家のもので、ネロはこれを律儀に届け、パトラッシュを彼らに託すと、再び雪のなかを歩き始めました。

財布を届けられたアロアの父は、これまでネロに厳しく接していたことを恥じ、翌日に彼の身元引受人になることを決意します。またコンクールでネロの絵を見た画家が、彼の才能を見込んで村を訪ねてくるのですが……どちらも手遅れでした。

歩き続けたネロは、ずっと憧れていたアントワープ大聖堂にやって来ていました。何もかもを失い、極寒のなかで命を削られた彼は、最後にルーベンスの絵を見たいと思っていたのです。パトラッシュも彼の後を追って大聖堂にたどり着きます。



聖堂内にはルーベンスの作品だけでなく、クエンティン・マサイス(Quinten Massijs)やフランス・フロリス(Frans Floris)など16-17世紀に活躍したフランドルの巨匠の絵画が飾られています。























『キリスト昇架(The Elevation of the Cross /The Raising of the Cross)』













ルーベンスが最後に描いた作品は、主祭壇に飾られている『聖母被昇天(The assumption of the Virgin)』











その時窓から一筋の光が差し込み、絵画を照らし出したのです。

『キリスト降架(The Descent from the Cross)』
ネロが見たかった絵画です


念願が叶ったネロは神に感謝の祈りを捧げ、パトラッシュと寄り添いながら天に召されていきました。




翌日、大聖堂に駆けつけた村人たちは、これまでの仕打ちを悔やみながら、彼らを祖父の眠る墓に手厚く供養したということです。

なんて悲しい物語でしょう。