「七夕」と聞くと、
何を思い浮かべますか?
短冊に願い事を書く。
織姫と彦星が一年に一度だけ出会える日。
そんなロマンチックな物語が、
すっかり定着しています。
でも実は、
七夕は織姫(ベガ)と彦星(アルタイル)の
恋物語だけではないのです。
そこには、日本人が千年以上にわたって受け継いできた
「祈り」と「祓い」の文化が重なり
現代に引き継がれています。
今日は、
五節句
乞巧奠(きっこうでん)
棚機津女(たなばたつめ)
瀬織津姫(せおりつひめ)
という四つの視点から、
本当の七夕を紐解いてみたいと思います。
◾️ 七夕は「五節句」のひとつ
七夕は、日本の五節句の一つ。
* 1月7日 人日の節句(七草)
* 3月3日 上巳の節句(ひな祭り)
* 5月5日 端午の節句
* 7月7日 七夕(笹の節句)
* 9月9日 重陽の節句
すべて奇数が重なる日になっています。
「奇数は縁起が良い」と思われがちですが、
実は、本来の陰陽思想では少し違います。
奇数は「陽」の数字。
その陽が重なることで、
「陽極まって陰に転ず」
と考えられていました。
つまり、
大きくエネルギーが切り替わる節目の要注意の日。
だからこそ、
お祓いをし、
季節の植物の力を借りて心身を整える日だったのです。
七夕も、本来は
「夏の穢れを祓う日」だったのです。

諏訪の八劔神社さんにて
◾️ 七夕の原型は「乞巧奠」
七夕の起源は、中国から伝わった
乞巧奠(きっこうでん)という行事。
7月7日の夜。
織女星(ベガ)と牽牛星(アルタイル)を祀り、
女性たちは祭壇を設け、
五色の糸を供え、
「機織りや芸事や、筆が上達しますように」
と祈っていた。
乞巧奠とは、
芸妓や初動、裁縫の上達を願う(乞う)祈りの祭り
だった・・・。
奈良時代になると、
この文化は日本へ伝わり、
平安の宮中行事として発展します。

宮坂宮司さんの美しい書と、梶の葉のスタンプ。
梶(かじ)の葉に和歌を書き、
琴を奏で、
香を焚き、
水面に映る月や星を愛でる。
なんとも雅な、
日本らしい美しい文化が育まれてきたのですね。
現在の短冊のルーツも、
この梶の葉に
和歌を書いていた風習と伝えられています。
◾️ 七夕の「たなばた」は日本にあった
実は「たなばた」という言葉は、日本にもともと存在していました。
それが
棚機津女(たなばたつめ)です。
秋の入り口の頃、
人々の罪やの穢れを祓うため、
清らかな巫女が川辺の機屋に籠もります。
その巫女は
神へ捧げる神聖な布を織り続け、
旧暦の7月7日の夜、
神様を迎え、
翌朝、神様がお帰りになるときに
村の災いも一緒に持ち去っていただく。
そんな神聖なお役目を担う女性が、
棚機津女(たなばたつめ)でした。
中国から伝わった「七夕(しちせき)」の節句と、
日本古来の「棚機(たなばた)」信仰が重なり、
さらに古い文献では、
紀元前、中国最古の詩集『詩経(しきょう)の織姫彦星のお話から
現在の「七夕(たなばた)」に進化しました。

諏訪の八劔神社さんの乞巧奠
◾️ 瀬織津姫との不思議なつながり
そして近年、もう一つ注目されている存在があります。
それが 瀬織津姫 です。
瀬織津姫は『古事記』『日本書紀』には
ほとんど登場しません。
ですが、
大祓詞には重要な神として現れます。
人々の罪や穢れを川へ流し、
海へ運び、
最後には跡形もなく消し去ってくださる。
そんな「水による祓い」の女神です。
水辺で神様を迎え、
村の穢れを祓う棚機津女。
川の流れで穢れを洗い清める瀬織津姫。
この二柱は、
とてもよく似ていませんか?
近年では、
「棚機津女とは瀬織津姫なのではないか」
という考え方も語られるようになりました。
もちろん、
これは現在の一つの解釈ですが、
水。
星。
織ること。
祓うこと。
これらが響き合って、
今の七夕という文化が形づくられてきたことは、
とても興味深いことです。
◾️ 実際に見た「乞巧奠」
先日、
長野県諏訪の八劔神社さんの
乞巧奠の設営のお手伝いをさせていただきました。
八劔神社さんは、
2026年、
信毎賞をご受賞されました。
冬の厳しい寒さの中、
諏訪湖の御神渡りを
毎日 ご観察される
宮坂宮司さん。
もう尊敬でしかありません。
その歴史はなんと584年だそうです!!!!!
信濃毎日新聞デジタルより拝借
↓
八劔神社さんの乞巧奠は
7/10ぐらいまで設営される予定とのことでした。
五色の布。
草木染めされた美しいシルクの糸。
梶の葉。
和歌を書く筆。
お酒、お米、お塩のお供え。
水面に月や星を映す器。
明治時代から受け継がれるお琴。
そしてハマグリに描かれた百人一首。

現代では忘れられつつある、
日本人の奥ゆかしい美意識と
祈りの心が
引き継がれ、
息づいていました。
言葉だけでは言い表せない・・・
なんとも感動的で、和の神聖な時間でした。

◾️ 七夕は、自分を本来の姿へ戻す日
2013年から、
おせち料理や五節句についてお伝えしてきました。
13年になりますが、
今でも知らないことや、
新しい発見が多くあります。
古くから受け継がれてきた行事には、
季節ごとに穢れを祓い、
自然と調和し、
本来の自分へ整えてまた新たな季節を
無病息災で歩んでいく。
そんな日本人の祈りが
込められています。
今年の七夕は、
願い事を書くだけで終わらせるのではなく、
空を見上げ、
水に触れ、
縦と横に折られた一枚の布や
お手元の服を感じて
心を整える時間をつくってみませんか。
2026年は丙午、
火の気質の強い年。
火災も多いです。
水のお清めの力を借りて、
後半も健やかに参りましょう。
今年の七夕は、
千年以上にわたって受け継がれてきた祈りと、
美しい日本文化につながる時間にしたいと思います。
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