富士宮市の市長が「遭難したら助けてもらえばいいというのはとんでもない話」

と、富士山登山者(主に訪日客)の遭難多発について、苦言を呈している。

 

冬山は、「上級者でも遭難するリスクが高い」という言葉を聞いて、命を落とす危険性が非常に高いと理解しているだろうか。

特に海外の方が富士登山、ことに冬季登山をする際に、どんな情報をもって上ることを決めているのだろう。

 

冬山登山と一言で言っても、様々な要素がある。

積雪期の中でも、初冬、年末年始、厳冬期、春山(4月からGW後)と様々で、しかもその年の積雪状況だけでなく、気象条件に非常に左右される。

 

夏山の富士山と冬の富士山では、同じ山とは思えないほどの違いがある。夏に登れた体力があっても、冬に登れる可能性は低い。

 

日本の登山愛好家が、冬に富士登山をする目的は「冬山訓練」の一環として行うことが多く、本番は北アルプスや南アルプスなどに出かける場合が多いのでは。

 

登山靴にアイゼンを付けて、ピッケルを手に持ち、斜度45度くらいの斜面を上り下りできる歩行技術。滑落した時にピッケルを使って自分の力で停止技術。悪天候に見舞われたときに、一時避難する技術。場合によっては、ロープを使って安全確保とか、冬山を安全に登って帰って来るには、運転免許を取るくらいの気力と体力、時間と装備や訓練に費やすお金と時間をかけなければ、まぁ無理である。

 

冬山登山の技術と知識、体力があり、必要な装備があっても、滑落事故で命を失う。私が入っていた山岳会でも、海外遠征をするような力があるメンバーが冬の富士山や、ヨーロッパアルプスで命をなくした。

 

私も3シーズンくらい、冬山に上ったことがある。

登山を始めた年の春から月に2回ほど登山を続けて体力を作る。最初は低山から始め、夏には3000m級の夏山の縦走(4泊5日のテント泊、20㎏程度のリュックを背負って歩ける体力、岩場の三点確保など)、秋からテント泊登山を繰り返しながら、岩登りやロープワーク、岩場でアイゼントレイニング、雪山で滑落停止訓練とビバーク訓練などを行った。リーダーになる先輩の許可がなければ冬山山行に参加できない。

 

 この年は、約10か月の間に40日ほど山に行き、やっと、年末年始に霞沢岳登山の許可が出て参加したが、結果は散々。雪が付いた沢を上るときの雪崩の恐怖、尾根を歩くときの恐怖。大した岩場でもないのに雪が付いているだけで怖い。吹き溜まりの下りは、腰までずぼずぼ雪にはまったり。男性との体力の差に唖然としたり。

登れたのは、ただただメンバーのサポートのおかげ。

 

例えば、ヨーロッパアルプスのマッターホルン登山では、入山許可を必要とし、ガイド登山が必要だったりする。日本人が海外登山をするときに、たとえ語学が堪能であってもガイドを付けたり万全の準備をするはず。

 

なぜ日本の富士山が訪日客から軽視されるのか。

 

海外の旅行サイトで、富士山についてはどの程度危険性が周知されているのか。

 

「遭難しても日本では救助をしてくれるから」と、安易に考えてしまう原因が日本側にあるのではないか。

 

「入念な事前準備で、安全に登山を楽しもう」この見出しを読んだだけで、冬の富士山は命がけになると分かってもらえるとは思えない。観光の一環として冬の富士登山を紹介していること自体、軽々しく冬の富士山に登れると、判断されてしまうと思う。

 

山梨県警の富士登山情報

https://www.jpnsport.go.jp/tozanken/Portals/0/images/contents/syusai/2022/tozanken/2022keikokubun.pdf

冬山登山の警告文

 

日本人の危険性の理解と、外国の人のそれとはずいぶん違うかもしれない。

 

観光庁、総務庁、内閣府、外務省などで行動の対策会議や、本格的な危険防止対策を講じているのだろうか。「インバウンド客の問題」と同じで、もしや自治体任せだったりして。

ニュースになった富士見宮市長の発言は、ほんの一部なのか、それともこの発言がすべてなのか。

 

訪日客の個々の問題に収斂させてしまうのは、片手落ちではないか。