二年前かな

NHKの仕事で
東北のある場所に行った

はっきりした場所は
 語弊があるので書けないが

山間部の奥の方とだけ、書いておく

次の日、朝早かったので
前日の夜
現場の近くの旅館に向かった

着いたのは夜の11時くらいだったと思う

旅館といっても
どこかの寮のような感じで
長い廊下に沿って
部屋がいくつも並んでいた


早く寝ようと、布団に入ったものの
なかなか寝付けない

夜中の一時をまわっても
スタッフが歩きまわっているのか
廊下のギシギシする音が気になり
目が冴えるばかりだ

そのうち

そのギシッという音が
微かに変わった

俺が寝ている部屋は
普通のドアがあり
部屋に上がると、障子があり
その奥が畳の座敷になっている

その音はドアの内側でした

目をつぶっていると
その距離感がよくわかる

あきらかに
ドアの内側で
ギシッという音が鳴ったのだ

もちろんドアは鍵をかけ、閉めている

次にまた
ギシッと音がした

今度は障子の内側だ

もちろん障子も閉まっている

あきらかに

なにかが

近づいて来ている

俺は恐ろしさのあまり
金縛りになりながら
ここで
目を開けていいかどうかまよった
途端

俺のすぐそばで
ギシッと音がした

もうだめだと思ったその瞬間

ピロロロローン!


けたたましく携帯が鳴り響いた

思わず
思い切り
ギャーと叫びながら飛び起きた

真っ暗な部屋が
携帯の明かりでチカチカしている

気がつくと
あたりには何もいない

あわてて携帯に出た

妻だった

時間は
深夜の2時頃だが
こんな時間に
妻から電話がかかることはまずない

内容は

おでんを食べてゲリをした

という話だった

ある意味これも怖い話だ

冷蔵庫に入れていたのにゲリをしたと

聞けば
三日間も入れていたらしい
真夏の三日間じゃ
ゲリしても当然だ。


次の日
マネージャーに
昨日遅くまで、スタッフが歩いて
廊下ギシギシとうるさかったよな
と聞くと
え?静かでしたよと
言われた。


俺が
いままで経験した
たった一つの怖い出来事だ

こんな俺が
経験するのだから

よほど強いなにかが

そこにあったのだろう


でも

いま考えれば

きっと妻が
助けてくれたんだな