所々口をはさむ以外、静かに聞いてくれていた拓磨さんはあたしが話し終えると、深いため息とともに背もたれにもたれる。
「邪魔をしたら殺す……か……」
「今は好きだった小杉くんまでひかりは殺そうとしていて……きゃっ!」
グラスの中の氷がカランと鳴り、あたしは立ち上がってしまうほど驚く。
「大丈夫。彼女の気配はないから。可哀想に……」
あたしのビクビクしている様子に拓磨さんが同情するように眉を下げる。
「おそらく彼女たちの間でなにかあったんだろうね」
「あたしもそう思いますが、ひかりは内向的で先輩の知り合いはいなかったんです。死んだ女性徒とのつながりがわからなくて。それと、暴走族の少年がどうして殺されたのか」
「彼女は相当恨みを持っているようだよ」
「恨みが……」
どうしてそこまで恨んでいるのか謎だ。
「邪魔をするなってことだから、小杉君と彼女の命を彼女はまだ狙っているね」
「彼を好きだったのに……」
「人を何人も殺し、彼女は一番なってはいけない霊になってきている」
拓磨さんは眉根を寄せて真剣な表情で悩んでいるよう。
「一番なってはいけない霊……」
たしかに罪のない人をかまわず憑依し、刑務所送りにしている。
「拓磨さん、あたしはどうしたらいいのでしょうか。ひかりにこれ以上人を殺してほしくないし、彼女がどうしてこんな風になってしまったのか知りたい」
「……彼女と話せるのは君しかいないだろう。だけど、彼女は君が知っていた頃の彼女とは違ってきている。警告している以上、君の命が危なくなるかもしれない」
「本音を言うと、怖いです。でも、このまま放っておいたら……ひかりが2人を殺したら成仏するんでしょうか?」
そう言う自分が怖い。
それは小杉と彼女が殺される前提の話だから。
「成仏は……今のままでは出来ないだろうな。俺より霊能力が強い人を知っているんだ。その人に相談してみようと思う」
「ありがとうございます!」
「おそらく君が俺のメモを失くしたのではなく、彼女に失くされたのだと思う。会うのを邪魔するために。でも、君の守護霊はかなり力があるようだ」
拓磨さんはあたしの顔から肩の方に視線をずらし微笑む。
「守護霊……ですか?」
「そう。君を守ってくれている……ん?……赤いものに気をつけろと」
拓磨さんはどうやらあたしを守る守護霊と話をしているみたい。
「赤いもの?」
「ああ。赤いものは彼女の力を強めるらしい」
その時、あたしは赤いものがなんであるか、ピンとこなかった。
それに気づいたのは拓磨さんと別れ、部屋で合宿の用意をしている時だった。
