
倭国は、海の向こうの戦さに敗れ、大王・天智は国の行く末に危機感を抱きました。
異国からの新しい神、すなわち仏教を迎え入れ、国の富強を目指しました。
しかし、その性急な仏教中心の変革は、国の各所に少なからず負荷を呼び、必然の軋み音を生じさせていました。
あの負け戦以来、猿田大将軍を知らずに暴言を吐く市民も出てきました。
その頃、ハリマは犬上の姓を賜り、湖東の地を預かる郷長となっていました。
まだ狼の顔のままでした。
子どもが知らせてくれました「大変だ・神座の杜が・・・」
政庁の役人が来て「国司様のご命令に従い、今建立している寺院の礎石にその岩を・・・」
ハリマ「その件ならはっきりとお断りしたはずです。
これは我らが里の産土神が振ります磐座(いわくら)であり、いくら寺院建立のためとはいえ、差し出すわけには参りません」
猿田が来たので、役人は帰ってしまいました。
猿田「この村のものは皆笑顔になっている。全てはそなたの力だ。やはりここも、寺院建立の使役に苦しめられているわけだな」
ハリマ「猿田様」
猿田「うむ、ここだけではない。今は国中の男たちが徴用に苦しめられている」
ハリマ「磐座をも差し出せと言ってきているのです。この里の者が昔から大切に護ってきた神様までも。いくらご改新のためとはいえ、なぜ」
猿田「犬上殿、ご改新のためというのは、あくまでも名目にすぎない。今この国は大きく変わろうとしている。そなたは知らぬかもしれんが、大津京は
では大王が病に伏せられている。政は一握りの者たちの手に委ねられようとしている。奴らはこの機を捉え、仏教を中心とした国づくりを推し進めようとしている。そのため、古き神々が邪魔になってくるのだ」
ハリマ「それでは長年護って生きて来た里の者は、どうなるのですか」
猿田「そなたの気持ちはわかる。犬上殿、朝廷内のすべてがこのやり方を快くく思っているわけではない大王の御弟君にして、東宮の王子にあらせられる。大海人皇子、心中ひそかに里の者たちの苦しみに心を痛めておられる」
ハリマ「そのようなお方が・・・」
猿田「うむ。今は辛抱の時だ。くれぐれも無理はするな」
大津京では、ハリマを邪魔に思う者が現れ「ご改新に抗う者だな。あの犬」
「見せしめにするには格好の相手かと」
おばばはいつの間か、病院の長のようになってました。
「わぬしも気をつけるんじゃな。いつまでも国司に抗っておると、あやつのようにとんでもないところへ追っ払われてしまうぞ」
磐座の撤去に、50人も国司が来ましたが、ハリマは作業員を蹴散らしました。
都では、大海人皇子が天智天皇を見舞いに来ました。
天智天皇「貴殿には大王を継ぐ気はないのか」
皇子はまげを切り「仏門へ入ります」と言って、出て行きました。
ハリマは馬へ乗って、大津の都へ出かけました。
しかし、ハリマにたくさんの矢が放たれました。
闇討ちでした。「剛炎寺が縁のもの。仏法の名において始末してやる」
狗族のルベツの娘・マリモが助けに来てくれました。
「磐座の杜へ逃げ込んで」
ハリマは、闇討ちの者に斬られました。
霧が濃くなったため、とどめをせずに退散しました。
マリモは、おばばのところに血のついた布を届けました。
おばばが間に合いました。
「いつからか、お前が本当の子供のように思えて来たんじゃ。治ってくれ」
磐座のところに来たマリモは「犬上様、死なないて」
火の鳥がささやきました「大丈夫。あの者は生き続けるでしょう。それが運命なのですから」
二月を待たずして、天智天皇は崩御されました。
前回の「火の鳥」の記事はこちら(2025年8月31日)
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では、明日。