
彰子は、内裏に戻る前に帝への土産を作ることにしました。
「藤式部の物語を 美しい冊子にして、帝に差し上げようと思っております」
倫子「それは 帝もお喜びになられましょう」
赤染衛門はまひろに「お方様だけは傷つけないでくださいね」と釘を刺していた。
彰子はまひろに「光る君が見つけた 若草のような娘の巻は若草色がよいであろうか? 藤壺の宮の藤色であろうか」
まひろ「中宮様のお好みで どちらでも」
女房たちが製本づくりに励んでいた。
道長と倫子が、筆や硯を届けてくれた。
各巻の清書は何人かの能書家に依頼された。
女房たちも製本を手慣れた手つきで行った。
帝に献上する「源氏の物語」の冊子はこうして完成した。
まひろ「中宮様、一度里に下がることをお許しいただきたくお願い申し上げます」
彰子「冊子も出来これから 内裏に戻るという時に 何故か?」
まひろ「久しぶりに 老いた父と娘の顔を見てまいりたいと存じまして・・・」
彰子「すまぬ。私は今、己のことだけを思い、そなたにひとときでも我がそばを離れられては困ると思ったが間違いであった。娘もさみしい思いをしておるに違いない。絹と米と菓子を土産として持ってゆくがよい」
まひろ「ありがたき幸せにございます」
彰子「ただ、内裏に戻る時は一緒に参れ」
いとらは白い米を初めて見たと言って喜んだ。
藤原為時「お前の働きのおかげでなんとか家の者らが食べてゆける。ありがたいことだ」
まひろ「私こそ賢子のことを父上にお任せしてしまって申し訳なく存じます」
帰って来た賢子は、まひろを見て表情を硬くした。
まひろは乙丸に「賢子が世話になっているのね。ありがとう」
乙丸「お方様・・・」
為時「泣くでない」
まひろ「乙丸って 泣いた顔と笑った顔が同じなの」
惟規も帰って来て夕食。
まひろ「藤壺の女房の皆はやんごとなき姫様方なのだけど、そろって あまりにも奥ゆかしすぎるのよ」
藤原惟規「みんな、それなりにかわいいけどね」
まひろ「すごいいびきをかいたり寝言を言ったりするのよ」
為時「お前とて、寝言を言ってるやもしれぬぞ」
まひろ「そうかもしれませぬ」
まひろのお土産話が止まらなかった。
惟規「姉上、飲み過ぎだよ」
為時「もうそのくらいにしておけ」
道長はまひろの姿が見えないのを心配して赤染衛門に確認した。
彰子「藤式部がいないと心細い。戻ってくるように文を書いておくれ」
為時「帰って来たばかりだと言うのにもうお召か。よほど 中宮様に気に入られておるのだな。左大臣様にもよくしていただいておるのであろう?お前が幸せなら答えずともよい」
まひろ「父上。賢子のことでございますが・・・」
為時「あの子にもそのうち、お前の立場は分かろう」
賢子「一体 何しに帰ってこられたのですか? 内裏や土御門殿での暮らしを自慢するため? いとや乙丸も変な顔してました」
まひろ「賢子の顔が見たいと思って帰ってきたのよ」
賢子「母上は、ここよりあちらにおられる方が楽しいのでしょう?」
為時「お前の母は働いてこの家を支えてくれておるのだぞ」
賢子「では、何故昨日のようなお話をするのですか? お菓子をたらふく食べたとか。母上が嫡妻ではなかったから、私はこんな貧しい家で暮らさなければならないのでしょう?」
為時「黙らぬか」
まひろ「私は、宮仕えをしながら高貴な方々とつながりを持って賢子の役に立てたいと思っているのよ」
賢子「うそつき。母上なんか大嫌い」走って泣いてしまった、
まひろ「すっかり嫌われてしまいました」
為時「お前がいない間あの子の友は書物であった。お前によく似ておる」
彰子は、敦成親王を連れて内裏の藤壺に戻った。
敦康が、彰子の戻りを待っていた。
彰子「敦康様は 大事な敦康様でございます」
帝のお渡り。
一条天皇「朕も敦康もさみしかったぞ」
彰子「恐れ多きお言葉もったいなく存じます。お上、こちらを献上いたします」
一条天皇「おお、これは美しいのう。『源氏の物語』か」
彰子「三十三帖ございます。後ほど 清涼殿にお届けいたします」
一条天皇「藤式部、これは そなたの思いつきか?」
まひろ「お上のためにこのような しつらえにしたいと仰せになりましたのは中宮様にございます」
一条天皇「ほう・・・」
まひろ「表紙も料紙も 中宮様がお選びになり御手ずから おとじになりました」
一条天皇「彰子、うれしく思うぞ。三十三帖か・・・大作であるな」
まひろ「まだ続きがございます」
彰子「これで終わりではないの?」
まひろ「光る君の一生はまだ終わってはおりませぬ」
彰子「これからどうなるのだ?」
まひろ「今いろいろと考えております」
一条天皇「それは楽しみである。大いに励め」
まひろ「はっ」
一条天皇「そうだ。藤壺でこれを読み上げる会を開いてはどうか?
一条天皇「女ならではの、ものの見方に漢籍の素養も加わっているゆえか。これまでにない物語となっておる。藤式部は 『日本紀』にも精通しておるしな」
一条天皇が 一目置いたことでまひろの「源氏の物語」は評判を呼び、彰子の藤壺を華やかなものにしていった。
一方 清少納言は定子の娘 脩子内親王に仕えていた。
高階光子「このままでは敦康親王様は左大臣に追いやられてしまいます。どうなさいます、伊周殿」
伊周「叔母上、敦康様は帝の第一の皇子。何より 皇后・定子様がお残しになったただ一人の皇子にあらせられます。帝のお気持ちが揺らぐことはありえませぬ」
源方理「しかし、最近では帝も左大臣様にお逆らいにはなれぬと聞いております。
源幾子「兄上、余計な心配をなさいますな。帝のお計らいで殿の位も元に戻されているのですから。今はお静かに」
伊周「事をせいては過ちを犯す」
幾子「されどこのままじっとしてはおられませぬ」
伊周「分かりましたゆえ、もうお黙りを」
1人で呪詛を続けた。
夜、まひろが物語の続きを書いていたら、悲鳴が聞こえ、まひろは彰子の元へ行った。
盗人が入ってきたという。
道長が知らせを聞いて駆け付けた。
道長「お前もよくやってくれた。これからも、中宮様と敦成親王様をよろしく頼む。敦成親王様は次の東宮となられるお方ゆえ」
まひろ「次の・・・」
道長「ああ・・・警固が手薄なことが分かっておって忍び込んだということはただの賊ではないやもしれぬな。これよりは後宮の警固を一層厳重にする。ご苦労であった」
1009年
年が明けると、一条天皇は伊周に正二位の位を授けた。
伊周は道長と同じ位になったのである。
伊周「この度のお取り立てえい慮まことにかたじけなく存じまする」
一条天皇「大臣にも准じる地位の者としてこれからも頼む」
伊周「どうか、くれぐれもよしなにお願い申し上げます」
公任「伊周殿がここまで盛り返すとは思ってもおらなんだ」
隆家「私は兄とは一切関わりございませぬ。とうの昔に兄は見限りました。左大臣様をあおるようなことを申す兄にもはやまともな心はありませぬ」
公任「俺も斉信も行成も道長を支えるつもりだ。そなたもその心があるか?」
隆家「もちろんにございます。
公任「伊周殿に何か動きがあれば知らせよ」
この日、為時が正五位下に昇った。
惟規「どうなってるんだろう 一体。父上もまた官職を頂けるということなのかな?」
まひろ「さあ?」
惟規「驚かないんだね」
まひろ「驚いてるわよ」
惟規「今日は おいしいお菓子はないの?」
まひろ「ありません」
惟規「そう、では」
少納言がまひろを訪ねて来ました。
「光る君の物語、読みました」
前回の「光る君へ」の記事はこちら(2024年9月29日)
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では、明日。