
1005年
一条天皇と亡き皇后・定子の遺児・脩子内親王の裳着が行われました。
一条天皇の亡き定子への執着は強く、いまだ公卿に復帰していない伊周を大臣の下大納言の上に座らせるよう命じました。
まひろはいとに「あれがきっかけでどんどん書きたいものがわき上がってくるの。帝のおためより何より今は、私のために書いているの」
いと「それはつまり日々の暮らしのためにはならぬということでございますね」
まひろは返事しなかった。
道長は土御門殿で漢詩の会を催し伊周と隆家を招きました。
伊周「私のような者まで お招きくださりありがたき幸せに存じます」
道長「楽しき時を過ごしてもらえれば私もうれしい」
帰り際に斉信「まことにけなげな振る舞いであったな 伊周殿は」
公任「いやいやあれは 心の内とは裏腹であろう。それより 大したものだ 道長は。まことに…。敵を広い心で受け止める器の大きさだ」
一条天皇「伊周を陣の定めに復帰させたい。そのように皆を説き伏せよ」
道長「恐れながら 難しいと存じます。誰かが身まかるか、退かねばありえませぬ」
一条天皇「朕の強い意向とすれば 皆も逆らえまい」
道長「されど、それでは角が立つ。異を唱える者も出よう」
一条天皇「ゆえに、そなたの裁量に委ねておる。朕のたっての願いだ」
道長「難しきことながら、はかってみましょう。過日 差し上げた物語はいかがでございましたか?」
一条天皇「ああ… 忘れておった」
道長はまひろに「帝に献上した物語はお心にかなわなかった」
まひろ「力及ばず 申し訳ございませぬ。帝にお読みいただくために書き始めたものにございますが、もはや それはどうでもよくなりましたので落胆はいたしませぬ。今は 書きたいものを書こうと思っております。その心をかきたててくださった道長様には深く感謝いたしております」
道長「それが お前がお前であるための道か?」
まひろ「さようでございます」
辞表を出した公任に、翻意を促すため一条天皇は 公任を従二位に昇進させました。
この辞表作戦を指南したのは 実資でした。
実資「辞表は うまく効いたようだな」
公任「実資様のお導きのおかげにございます」
一条天皇が道長に「読んだぞ。あれは 朕への当てつけか?」
道長「そのようなことはございませぬ」
一条天皇「ところで、あれを書いたのは誰なのだ?」
道長「前越前守藤原朝臣為時の娘まひろにございます。以前 帝にお目通りがかなったと伺っております」
一条天皇「書き手の博学ぶりは 無双と思えた。その女にまた会ってみたいものだ」
道長「すぐにも藤壺に召し出します」
一条天皇「会うなら 続きを読んでからとしよう」
道長「続き…ですか?」
一条天皇「あれで終わりではなかろう」
道長「はっ。承知つかまつりました」
道長がまひろ「中宮様の女房にならぬか?」
まひろ「は?」
道長「帝が続きを読みたいと仰せになった。何だ その どうでもよい顔は」
まひろ「続きをお読みくださいますならこの家で書いて お渡しいたします」
道長「それでは駄目なのだ。帝は博学なお前にも興味をお持ちだ。中宮様のおそばにいてもらえれば、帝がお前を目当てに藤壺にお渡りになるやもしれぬ」
まひろ「おとりでございますか」
道長「そうだ。娘と離れ難ければ 連れてまいれ。女童として召し抱える。考えてみてくれ」
自宅で倫子「殿が なぜ まひろさんをご存じなのですか?」
道長「公任に聞いたのだ。面白い物語を書くおなごがおると。帝はその女子が書いたものをお気に召し続きをご所望だ」
倫子「まあ」
道長「藤壺にその女子を置いて、先を書かせれば帝も 藤壺にお渡りになるやもしれぬ」
倫子「名案ですわ 殿、さすが」
道長「そうか。倫子がよいならそういたそう。これが最後の賭けだ」
為時「帝の覚えめでたくその誉れを持って藤壺に上がるのは悪いことではないぞ」
まひろ「賢子のことは、左大臣様は 藤壺に連れてきてもよいと仰せなのです」
為時「内裏は華やかな所であるが恐ろしき所でもある。お前ほどの才があれば恐れることもあるまいが、賢子のような幼子が暮らす所ではない」
まひろ「そうですね。賢子は 父上に懐いておりますので、私がいなくても平気かもしれませぬ」
為時「任せておけ」
賢子にまひろ「さみしかったら 月を見上げて。母も同じ月を見ているから」
挨拶に内裏へ
まひろ「前越前守 藤原朝臣為時の娘まひろにございます。
帝と中宮様の御ために一心にお仕え申し上げる所存にございます。
赤染衛門が内裏を案内した。
衛門「私の夫は あちこちに子を作りそれを皆私が育てておりました。そのうち最初の子が大きくなって下の子らの面倒を見てくれるようになり、帰ってこない夫を待つのにも飽きましたので土御門殿に上がったのです。人の運不運はどうにもなりませんわね」
まひろ「あのぉ、中宮様はどのようなお方なのでしょう」
衛門「それが、謎ですの」
まひろ「小さい頃からそばにいらしたのに?」
衛門「それでも分かりません。 奥ゆかしすぎて」
道長のもとに安倍晴明の危篤の知らせが来た。
「お待ちしておりました」
道長「思いの外 健やかそうではないか」
晴明「私は今宵死にまする。ようやく光を手に入れられましたな。これで中宮様も盤石でございます。いずれ、あなた様の家からは帝も皇后も関白も出られましょう」
道長「それほどまでに話さずともよい」
晴明「お父上が なしえなかったことをあなた様は 成し遂げられます」
道長「幾たびも言うたが父のまねをする気はない」
晴明「ただ一つ 光が強ければ闇も濃くなります。そのことだけは お忘れなく」
道長「分かった」
晴明「呪詛も祈とうも人の心のありようなのでございますよ。私が何もせずとも人の心が勝手に震えるのでございます。何も恐れることはありませぬ。思いのままにおやりなさいませ」
道長「長い間、世話になった」頭を下げた。
その夜、自らの予言どおり晴明は世を去りました。
一条天皇は、伊周を再び陣定に召し出す宣旨を下しました。
実資「言葉もない、不吉なことが起きなければよろしいが…」
その夜 皆既月食が起きました。
闇を恐れ 内裏は静まり返りました。
月食が終わる頃温明殿と綾綺殿の間から火の手が上がり、瞬く間に内裏に燃え広がりました。
一条天皇が彰子の手を取って「参れ」
翌朝、居貞親王が昨夜の火事について「これはたたりだ。伊周などを陣定に戻したりするゆえ…。叔父上も そう思うであろう」
道長「帝も、八咫鏡を焼失されて傷ついておられます。もう これ以上帝をお責めになりませぬよう」
居貞「東宮が帝を責め奉るなどあろうはずもない。
されど 月食と同じ夜の火事これが たたりでなくて 何であろうか。天が帝に玉座を降りろと言うておる」
道長「帝は まだお若くご退位は考えられませぬ」
居貞「どうかな。間違いない。帝の御代は長くは続くまい」
伊周は一条天皇に「誰も申さぬと存じますがこの火の回り具合からすると、放火に違いございませぬ。火をつけた者が内裏におるということでございます。こたびの火事は、私を陣定に加えたことへの不満の表れだといわれております。たとえ、そうであろうとも火をつけるなぞお上のお命を危うくするのみ。そういう者をお信じになってはなりませぬ。お上にとって信ずるに足る者は私だけにございます」
伊周の弟・隆家は「志高き政がしたいだけで兄とは違う」と道長に接触。
まひろ「では行って参ります」
為時「帝にお認めいただき中宮様にお仕えするお前は、我が家の誇りである」
惟規「大げさですねえ。俺、内記にいるから遊びに来なよ」
まひろ「中務省まで行ったりしてもいいのかしら?」
惟規「待ってるよ」
まひろ「父上、賢子をよろしくお願いいたします」
為時「身の才のありったけを尽くしてすばらしい物語を書き帝と中宮様のお役に立てるよう祈っておる」
まひろ「精いっぱい務めてまいります」
為時「お前が… 女子であってよかった」
雪がちらついていた。
まひろが、内裏に上がりました。
前回の「光る君へ」の記事はこちら(2024年8月25日)
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では、明日。