
第十九回 信長を暗殺せよ
泣きじゃくる土田御前に、信長が「母上、申し訳ございませぬ」
御前「満足ですか?弟を手にかけ、尾張を手中に収めて。そなたはむごい、私はこの先何をよすがに生きていけばいいのか・・・」
信長「それほどお嫌ですか?母上を喜ばそうとすればするほど、遠ざけられた」
御前「そなたは、いつも私の大事なものを壊す。そなたがそばにいるだけで、私の心は穏やかではなかった。それを癒してくれたのが、信勝であった。そなたは、また私の大切なものを壊したのじゃ」
信長は帰蝶の前に来た。
「終わった。わしも父も、弟も。母も失った」
1558年、将軍足利義輝は三好長慶と和睦し、京へ戻った。
三好「首を長ごうしてお待ち申し上げておりました。どうぞごゆるりとお過ごし下さい」
足利「うむ」
将軍が諸大名に上洛を求めた。
越前にて十兵衛は浪人暮らしをして、子どもたちに読み書きを教えていた。
十兵衛は朝倉に呼ばれた。
「そちに頼みがある。京へ行って欲しい。面倒なことに巻き込まれるのはごめんじゃ。この鷹を献上するのじゃ。それでしばらく様子見じゃ」
十兵衛「京をこの目で見てきたいのだ」
煕子は「ややこが」
十兵衛「でかした、はっはっは」
十兵衛は京に着いて、三淵と藤孝は鷹を見せた。
「これはすばらしい」
三淵「朝倉殿が上洛されなかったのは残念である。信長様が、まもなく上洛される」
足利は十兵衛に「能はよい、そなたも見るが良い」
十兵衛「はっ、ありがたき幸せ」
斉藤義龍も上洛していて、十兵衛をにらみつけた。
藤孝「妙な噂がありまして。義龍の刺客が信長を狙っている」
聞いた十兵衛は驚いた。
藤孝「今の上様には、抑える力はございませぬ。京に戻られてまだ間も無く、以前にも増して力を持っているのが三好様なのです」
十兵衛「しかし、何か手を打たねば」
藤孝「何ゆえ、十兵衛殿はそこまで信長殿を・・・?」
十兵衛は、かつて信長が道三に話したことを言った。
「家柄も血筋も無い。これからは戦も世の中も変わりましょう。よろず、新たに作るしかない。我らよ変わらねば・・・。やすやすと死なせてはならぬお方です」
藤孝「では、松永久秀様に相談されてみては」
松永「十兵衛、生きておったか」
十兵衛「お久しぶりでございます」
松永「心配しておったのだぞ。そんなことより、山城守様のこと、残念であったな」
十兵衛「はい」
松永「そなたには借りがあるな」
十兵衛「恐れながら、その借りをお返しいただくわけには参りませぬか?」
松永「ん?」
その頃、織田信長は初めての上洛途中にあった。
松永「斉藤様にお願いの儀があり、まかり越しました」
義龍「お願い?」
松永「不届きものが後を断ちませぬ。実は不穏な動きがございまして。強者揃いの斉藤殿に是非とも力を貸していただきたい。何かご存知か?」
義龍「いや」
松永「お引き受けいただけますな?」
松永は戻って来て十兵衛に「これで貸し借りなしだな」
十兵衛「ありがとうございます」
松永「斉藤殿がお主を呼んでいる。話があるそうだ」
義龍「松永久秀を担ぎ上げるとは、考えたな。こたびのこと、どうやって知った?まあよい。遅かれ、早かれ、信長は我が手で撃ってみせる。お主は道を誤ったな。わしに素直に従うておれば、今頃美濃で要職についておった。今や浪人の身か」
十兵衛「悔いてはおらぬ」
義龍「どうだ、もう一度考え直しわしに仕えぬか?手を貸せ」
十兵衛「断る」
義龍「相変わらず頑固な男よ」
十兵衛「一体どうした?次に会うた時には私の首をはねると申していたお主が」
義龍「今まで血を流し過ぎた。弟を殺し、父を殺し、わしに従うものはあまたおるが、ただわしを恐れそうしているに過ぎぬ。腹の中では何を企んでるかわかったものではない」
十兵衛「悔いておるのか?」
義龍「悔いておる、と申したら、わしに付いて来てくれるか?」
十兵衛「お主にはつかぬ」
義龍「十兵衛、お主一体何がしたいのだ?」
十兵衛「道三様に言われたのだ。大きな国をつくれと
誰も手出しのできぬ大きな国を。今はまだ自分でどうしてよいのかわからぬ。しかし、その道三様の言葉が、ずっとこの胸のうちにあるのだ」
義龍「大きな国。父上が・・・美濃よりもか」
十兵衛「そうだ」
義龍「分かった。行け。さらばだ。もう会うこともあるまい」
十兵衛は振り向かなかった。
斉藤義龍は2年後、病によりこの世を去った。
3日後、信長は将軍・義輝に謁見した。
信長「上様にお願いの儀がございます。これ以上無益な戦をすれば、田畑は荒れ、国は疲弊するばかり。
万民のため、何卒、兵を退くように上様から命じていただきたく、お願いもうしあげます」
足利「あいわかった。そなたの申す通りだ。織田上総介、そなたにも官職を付けてやろう。左京大夫でどうだ?今川より上だぞ。
信長「それで今川は引き下りましょうか?引き下らぬなら、将軍家の相伴衆(宴席などで将軍家の連れとして同伴することが許された者)になるが良い。そうなら今川も手を出せまい」
足利「今のわしには、それくらいのことしかできぬ・・・」
十兵衛「信長様、お久しぶりでございます」
信長「あれからわしも色々あってな。わしが相伴衆になったら、今川が手を引くと思うか?今川は尾張に入り込んで、出城を築こうとしている。こちらは手も足も出ぬ。それで上洛したのだが、将軍様も苦しんでおられるようじゃ。今の世はどこかおかしい。尾張が心配じゃ、わしは帰る。いずれまた」
十兵衛「あ・・・」
松永のところに信長が寄ったことを十兵衛は聞いた。
松永「それにしても妙な男じゃのう。尾張を差し出す代わりに、摂津をくれと申すのじゃ。国を取り替えてくれと言うのだ。尾張は敵に囲まれて、戦がたえん。
戦はもううんざりだ、だから摂津と取り替えてくれと申すのじゃ。堺で交易をして商いをしたい。わしならそれくらい出来るだろう。摂津は三好様の領国だ、そんなことが出来るわけがない。本気なのか、ざれごとなのか、よくわからん。ただのうつけではないな」
十兵衛「亡き道三様は、信長様から目を離すなとおっしゃられました」
松永「山城守様がそう申されたのか?」
十兵衛「道三様は、信長様のことを買っておられました」
松永「将軍様にも目通りしたが、がっかりしたと申しておった。もはや将軍様はあてに出来んと」
十兵衛「将軍様の大名同士の争いの仲立ちもできぬ様子、まことに京を収めているのは、三好様。
このままでは、武士を束ね、世を平かに出来るのは誰なのか、私にはわからなくなって来ました」
松永「それはわしにも分からぬ。また、戦になるかもしれぬし、ならぬかもしれぬ」
第二十回 家康への文
1560年 称念寺に、左馬助が尾張から戻って来た。
十兵衛のところへ、駒が薬草を送って来た
米がないため駒からの薬草を半分質入れすることに。
今川義元の勢いが強まり、国境の主だった城が今川方に取り込まれていた。
今川は大高城や鳴海城、これらを足掛かりに一気に尾張に攻め込むことを決めた。
先鋒は三河の者にする。
元康(風間俊介)は、智源院で東庵を相手に将棋をさしていた。
東庵の98勝5敗。
東庵のおかげで松平元康のおば源応尼の首の痛みもだいぶ取れて来た。
駒のお灸の腕はかなり上がっていった。
今川の人質である元康は尾張へ戦に行く。
芳仁(ベンガル)という老人が何にでも効く薬を作っている。
駒はお灸を打っている関係で知り合いになっていて、薬を元康にあげた。
今川は東庵を呼び立てた。
肩こりがひどいと言う。
今川「元康が尾張へ寝返れば、わが身が危うい、どうじゃ」
東庵「医は仁術と申します、人を見るのが仕事でございます。元康様は裏表のない方」
今川「安心したわい」
今川は2万5000の軍勢を率いて、尾張を目指していた。
信長の兵は3000あまり。
帰蝶は「負けぬ手立てを」
熱田に水野信元と竹千代の母が来ているから、会いに行くと言う。
その頃、のんきに蹴鞠に興じている朝倉のことを十兵衛は怒った。
信長は、元康に離反するよう水野から説得してもらうよう頼んだ。
水野の条件は「三河の者は三河に戻す、それなら納得しましょう」
信長「約束しよう」
文は菊丸に託された。
大高城に元康が到着。
菊丸は春次と呼ばれ、顔見知りだった。
於大の方(松本若菜)からの文を直々に渡した。
「この戦は勝っても負けても何もいいことはない。身を引きなされ」
元康「これが母上の・・・」
菊丸からも「今川の元では、三河には陽が当たりませぬ」
十兵衛は尾張に急いだ。
前回の「麒麟がくる」の記事はこちら(2020年8月30日)
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では、明日。