私は長らくオタク界にいたせいか、
「なぜそれが好きなの?」
と聞かれることが、これまでほとんどなかった。
(高校生の頃からコミケに参加し、同人誌を作ってました
)
オタクにとって「好きなものは好き」。
それがすべてだからだ。
ところが最近、立て続けに
「どうしてそれが好きなんですか?」
と尋ねられることがあった。
私はそのたびに、言葉に詰まってしまった。
好きに理由なんて考えたことがない。
「好きだから好き」。
それ以外になにがある?
好きには理由が必要なのだろうか。
世間一般では、どうやらそうらしい。
「好き」と言うと、セットで「なぜ?」が返ってくる。
だけど、私にはうまく説明できない。
考えたこともないのだから、当然だ。
そんなとき出会ったのが、頭木弘樹さんの著書
『口の立つ奴が勝つってことでいいのか?』だった。
理路整然と説明できなくてもいい。
うまく理由を言えなくてもいい。
言葉にできなくてもいい。
沈黙や詰まりにこそ、深い思いが宿る。
そんなことがやさしく綴られていた。
この本には、よくある自己啓発書のような
「感謝しましょう」
「楽しみましょう」
「自分らしく生きましょう」
といった明るく元気なスローガンはない。
むしろ、
「ええ、わかります。わかりますけど、ちょっと……」
と小さく言い訳するような、そんな曖昧さがある。
そして私は、こういう曖昧さがとても心地よいのだと気づいた。
この本を読んでいて、私が昔から好きな河合隼雄さんの言葉を思い出した。
「マジメも休み休み言え」
「100%正しい忠告はまず役に立たない」
「灯を消す方がよく見えることがある」
柏木さんも河合さんも、
「明るく、正しく、元気に、前向きに」ではなく、
少し斜めから、曖昧さも弱さもそのまま認めてくれる。
その感覚が、私はとても好きなのだ。
人間は、明るく、元気に、前向きにだけでは生きていけない。
そのあわいにある曖昧さや弱さを肯定してくれる
そんな優しさを持つ本だ。
「明るく元気に前向きに生きる」ことにちょっと疲れた人は、是非読んでみてほしい。
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