人は、
「蝶だ」と思って近寄ってみて、
「蛾だ」とわかるとそれをはたき落とす。

(ニシキオオツバメガ)
蝶は美しいけど、
蛾は醜いと思い込んでいるからだ。
見た目だけで「蝶だ」と期待したのは人間の勝手だ。
そして、
がっかりして怒って、
「汚ならしい蛾だ」とはたき落とすのも人間の勝手だ。
蛾はただ自分らしく生きているだけなのに、
蛾にしたら迷惑だ。
蛾に「あなたは頑張れば蝶になれますよ」と言うのもおかしい。
蛾には蛾の良さがあって、
蛾の生き方がある。
別に蝶にもなりたいとは思ってないだろう、
本当に大きなお世話だ。
綺麗事は嫌いなんだけどな、
ちゃんと蛾をやってる蛾に謝れ。
私は蝶じゃなくて蛾として生きたいのだ。
蝶の真似事は出来るが、
所詮真似事だからすぐばれる。
いくら自分や他人を偽ったって、
すぐばれる嘘なんかつきたくもない。
「残念でした、私は蛾です」
ってすぐ白状しちゃうよ。
蝶と蛾に優劣はない。
優劣をつけたのは人間で、
どっちもただ遊ぶようにヒラヒラ舞ってるだけだ。
例え期待はずれでも、
人に嫌われても、
一生隠せる訳じゃなし、
「だりあさんは若い女が嫌いだよね。
俺にはわかるよ、俺も嫌いだし憎んでるからね」
と彼は言った。
「若い女はね、自分が若くて可愛いから、
愛されて大切にされて当然だと思ってるだろ。
だりあさんはひとりで苦労した時代があったから、苦労してない女が嫌いだろ?」
「そういう君だって若いじゃない?
でもね、娘には同じ苦労はさせたくないのよ。
やっぱり母親としては、
苦労知らずで蝶よ花よで生きて欲しいわ」
自分でも矛盾してるよな、
とは思う。
自分は蛾なのに、
娘には蝶として生きて欲しいなんて。
そして、
苦労知らずで愛される、
綺麗なだけの蝶を、
憎んでいるなんて。
自分だって、
若いってだけで、
ちやほやされた時代もあったのにね。
この世界は、
本当は自分が蝶なのか蛾なのかわからない、
蛹が見てる夢に過ぎない。
「元は違えど匂いなら、
似せることに没頭が美学」




















