
【 本とおやつ 】上田健次さんとヒトツブカンロ
手元に置いておきたくなる本は自宅へお迎えしています。
本棚に並んでいるといつでも手に取れて、ページを捲ることも、気になった時に前のページまで戻り読み返したりすることも好きで紙の良さも感じています。
このたびは友人からおすすめしていただいて、読み進めていくうちに心穏やかになれる本に出会いました。
【 了読 】
『 銀座「四宝堂」文房具店 』作者 上田健次(小学館出版)
2022年10月6日第一刷発行
銀座にある老舗文具店の店主さんが訪れる人の困りごとを文具を介して導いていくお話です。
読み始めるととまらなくなって、夢中で読みました。
短編5篇からなる物語で、ひとつを読み終えるたびに文具屋さんへ伺って1枚ずつの便箋を選んで大切な人へお手紙を出したくなるような、そんな気持ちになりました。
なかでも〝システム手帳〟のお話は本を購入したあとでお店の近くにあるカフェで読んでいたのですが、気がついたら涙が止まらなくなっていて、でも手を止めることができなくて、この物語を読み終えてから帰宅してもう一度すぐに読み返しました。
銀座のクラブで勤めている女性が他店に抜擢されて心情や大切な上司とのやりとりなど情景がすぐに浮かんでくるような物語のなかで、文具に込められた思い出や、一歩踏み出すときの心持ちや葛藤が描かれているんです。
人の温かさに触れていた時間がふわっと巻き戻ってくるような胸が締め付けられました。
私自身は抜擢されるなどとは縁遠いところで暮らしているのですが、悔しいときよりも優しさを受け取ったときに涙が溢れてくることが間々あって、そんなときの大切にしたい記憶も一緒に呼び起こされました。
四宝堂は銀座のイメージとぴったりな背景やお店、どの登場人物もとても魅力的で惹き込まれます。
物語の舞台である四宝堂文具店は実在しませんが、了読後に銀座へ足を運んで大通りを外れた路地を歩いていると、たびたび登場する喫茶店とあわせてこんなところにありそうだなあと思いを馳せたりしてしまいました。
銀座の文具屋さんといえば伊東屋さんや東京鳩居堂さんを真っ先に思い浮かべる中、どちらかというと鳩居堂さんが近しくてさらに路地裏に佇まれているようなイメージ。
読み終えた翌日に居ても立っても居られず母へ手紙を書いて、この本と一緒に贈りました。
今まで書いたことのない改まった想いを綴ってみましたが、感謝を伝える良い機会をいただいたと感じます。
作中には型番含めて文具が紹介されていて、馴染みのあるコクヨのキャンパスノートやツバメノート・ロディアのメモパッドをはじめ、憧れの手帳や万年筆など、思い当たるものから初めて知るものまでさまざまで興味深いものです。
コクヨのキャンパスノートはわたしも学生時代からの愛用品です☺︎
また、文房具店で名刺を特注できたり筆耕をお願いできたりすると知らなかったのですが、そういった文具店ならではの役割やお仕事を知られるのも楽しい時間でした。
現在は4巻まで発行されていて、5巻も4月に発売とのこと。
早く早くと気持ちが急いでしまいますが、大切に一頁ずつ読ませていただきたいです。




