真ん丸の目をして翔。
すぐさま翔から離れて優里亜、右手を振り、
「じゃね。おやすみ…。」
翔、茫然としながら…。
アパートの中に消えて行く優里亜。
そして途中の階段から翔に手を振り…。
そんな優里亜をただ、ただ、見ているだけの翔。
やがて優里亜が自分の部屋の中に入っていく。翔、
「…俺…。…今の…。うそ…。…優里亜…。」
ドアの内側で、ドアノブを背中に回した両手で握りながら。
「はぁ、はぁ…。」
そしてまたドアを開けて、廊下に出て下を…。
後ろ姿で駅に向かう翔。
優里亜、小さな声で、
「翔…。」
歩きながら翔。ポケットからスマホを…。その時、
「え――――――――っ!!!」
そして、
「マジで…。」
慌てながら、
「いつ…???いつ、いついついつ。いつから…。ガ~~~ン。電源…入ってねぇじゃねぇかよ~~~。」
そして電源が入ってラインを表示したかと思うと…、
「わわわわ。わわわわわわ~~。」
そして翔。自分の額に右手を…。背中には冷や汗を…。
ぼそりと一言…、
「…だよな~~~。やっべぇ~~。」
次から次へと既読になる奈都美からのメッセージ。
「わっちゃ~~~。」
すると、待ってましたとばかりに、着メロ。恐る恐る、画面をスワイプ。そして、
「もしもし…。」
「なにやってんのよ~~。もぅ!!!…私、帰るっ!!!」
その一言に、翔、
「ご…、ごめん。」
プツリと切れる通話。
翔、立ち止まって、
「な…、なんで…俺…。…あいつ、怒ってんな~~。」
そして、
「ま~~じぃ~~。」
頭の後ろを右手で掻いて。
翌日の午後2時。
靖子、勇喜雄に、
「ねね、ナッちゃん…、翔と…、何かあった…???」
勇喜雄、その声に、頭を傾げて、
「さぁ…???」
靖子、
「なんで…???…今日、あのふたり、何も…話して…ないけど…。」
靖子の隣で康、
「喧嘩でも…したか~~???」
そんな康を靖子、
「ばか、蔵之介、声…おっきぃって。」
葉月、翔の隣で、
「やれやれ…。こりゃ。しんどいね~~。」
そして、顔をくしゃりとさせて、
「この状況…、いつまで続くんだ~~。やだ…私…。」
朝から一切、口を利いていない奈都美と翔。
翔、小さな声で、
「だって、電話しても出ない、ラインしても既読にならない。朝、顔を合わせても、無視。どうしようもねぇだろ。」
葉月、
「ちゃんと、謝んなさいよ。マルシェで、食事も進まず、ずっとあんたから連絡、待ってたんだから…。」
翔、顔をくしゃりとさせて…。
葉月、
「大体、あんた、夕べ、何してたのよ。私たちが仕事、終ってから~~。」
「それは…。うん。まぁ…。」
「は・あ…???…何が、それは…。うん。まぁ…。よ。」
翔、思わず溜息。そして口をへの字にして、右手人中指を鼻の脇に、指先で撫でながら、
「…ったく~~。」
伸永、
「翔さん、夕べ、何かありました…???」
その声に翔、
「尾田ちゃん。」
困ったような顔をして、伸永の右肩を左手でトントン。
「うんうん、分かった。分かった。ありがとう~~。」
伸永も、その声に、困ったように…、
「あっ、いえ…。別にお礼なんて…。」
翔、
「ふ~~ん。」
そして口を一文字に、鼻で息を…。そして両目だけキョロキョロと。
休憩コーナーでコーヒーを翔。
コーナーの外、奈都美が資料を持って通り掛かる。
外から内側にいる翔の顔。横目で…。
翔も奈都美の顔を目で…。
奈都美が通り過ぎる。翔、頭をガックリと。
数秒後、
「バカける。」
いきなり翔の左傍で。
翔、
「うわっと。びっくりした~~。」
ぶすっとした顔で奈都美。
「あ…。っと…。う…。うん…。その…。」
頭を掻いて翔。
「昨日は…、ごめん。」
奈都美、ぼそりと、
「待つ身になってよ。」
「う…、うん。」
奈都美、
「昨日…、あれから…、何やってたの…???」

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