伸永、瀧澤の前でいろいろと指示をもらい、その度に、頭をコクリ。
そして、小さな声で、「はい。」
その度に瀧澤、
「はい、もっと声おっきく。元気に。うちのルーキーなんだから、頑張れ。」
伸永、
「あ、はい。」
そして、懸命に背筋をピンと伸ばして、
「はい。ありがとうございます。」
その姿勢と声を見て、聞いて、瀧澤、
「ぷっ。うん、よろしい。」
つかつかと自分の席に戻る伸永に靖子、
「はい。そうそう。いつもしっかりと、そんな風に歩く~~。伸永~~。」
その声に、ムキになって歩く伸永。
翔、
「かかかか。おま、なんでそんな力を入れる~~。逆に不自然~~。」
その声に木綿子。
「ぷっ。」
斜め向かいの席で、困ったような顔の奈都美。
電話の音。内線である。
葉月と翔の真ん中の電話機。翔、葉月に、「俺が出る。」のゼスチャー。
「商品開発部、幸村です。」
そして受話器を持ち直して、
「…あぁ…、お疲れ。……うん。えっ…???あぁ…。うん。」
翔、隣の伸永を見て、
「うん。」
そして、向かいの奈都美の顔をチラリと見て。
「あ…。あぁ~~。え~~???」
その声に、隣の葉月、翔の顔を…。
向かいの奈都美も…。
「あ~~、分かった。うん。うんうんうん。」
そして受話器を戻して。
葉月、
「どしたの…???」
そんな葉月に翔、
「ふ~~~ん。なんだかな~~。営業で、尾田君…ちょっと借りたいって言ってきた。」
葉月、
「はい…???営業の…誰よ…???」
「誰って…。分かんだろ、こっちの、この電話に内線する営業…って言えば。」
「はっ…???」
目をキョロキョロとさせて、葉月、
「もしかして…。」
「そっ。もしかしての…あいつ…。」
「加瀬優里亜。」
「ご名答~~。」
その名前に奈都美、
「へっ…???どしたの~~???」
翔、
「加瀬がさ、尾田君をちょっと借りたいって、言ってきた。」
伸永、翔を見て、
「えっ…???」
奈都美、
「なんで。なんで、加瀬さんが~~???」
「ん~~。なんでも、尾田君が、芸大出で、絵の才能があるって…、聞きつけたみたいでさ。」
「絵の…才能…???」
首を傾げて奈都美。
「うん…。なんだか…、営業の方で、あるキャンペーン、やるんだとか…。しかも、かなり…若層向けの…。」
「はぁ~~あ…???」
「それに…、なんとも、いいアイディアと言うか…、いいデザイン…思いつかないんだと…。…つまりは…インパクトのある…???」
「インパクト…???」
「…で、尾田君の力…???…って、訳…???」
隣から葉月。
翔、
「うん…まぁ…。」
口を捻じ曲げて…。
「いやいやいや。そんな事やったら、こっちの仕事…。」
翔、その奈都美の声に、
「ふん。…けど…。今思ったんだけど…。上から命令されるより、俺たちから…の方が…、尾田君にしても…、やりやすいんじゃないかって…。ほら。まだ、入社して、間もない訳じゃない…???」
奈都美、
「ん…まぁ…。言われてみれば…。…でも、けどさ…。」
「うん。分かってる、ナツの意見聞かないと。…って…。」
その時、隣の木綿子、奈都美の左肘を突っつき、
「やったんさい。これも何かの経験。」
「ん~~。」
腕組みをして。
「分かった。…けど、ひとつ、条件。私も付き合う。じゃないと、今の商品の事もあるし~~。」
翔、
「おぅ。んじゃ、今、電話してみる。」
そして営業部。
「おぅ、忙しいとこ、悪かった。」
迎えたのが、営業部の勝巳芳樹(かつみよしき)。
「お疲れ様。どぞ~~。」
加瀬優里亜である。
「実は、来月から1ヶ月限定で、キャンペーンをすることに決まったんだ。」
芳樹。
翔、奈都美、
「キャンペーン…???」
優里亜、
「ふん。…で…、そのキャンペーンのデザイン…、商品開発部の尾田君…借りたいなぁ~~って思って…。」

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庄司紗千 「雫音〜shizukune〜」
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。