ドアの近くまで来て翠、橙に、
「ゆず~~。あなたがユッキの事、好きだって言うのは分かってる。」
そしてちょっと意地悪くにんまりとしながら翠、
「万の言うとおりに、ユッキを、私から奪うんなら、どうぞ、奪ってみな。かかか。お手並み拝見。…けど、ユッキがあんた、ゆずを好きだと言うんなら、話は別だけど…。」
そんな話を聞いて橙、
「チ…、チーフ…。」
「とにかく、あんたの思い、ユッキに伝えてみな。…けどさ~。これと遊馬君の事は全然、別問題だよ。」
「……。」
「あんたが今まで遊馬君に何をしてきた…???」
その声に橙、まだ黙って、
「……。」
「あん~~なに、一生懸命、見てきたんだよ。遊馬君の事、心配で、心配で…。」
翠、腕組みをして、
「師長の奥村さんも言ってた。遊馬君の事、あんなに見舞いに来てくれている人、店長、そしてゆず、あんた。それから私だって。私なんて、遊馬君が倒れた、その場にいた人間だから…。それだけ、遊馬君の事、心配で、心配で…。…だからなんだけど…。」
橙、小さな声で、
「チーフ。」
「あんた、ゆず、あんたは私以上に、遊馬君の事…見てきたんじゃない。」
ドアを開けて入ってきた礼人。
「…ん…???どしたの…???」
翠、そんな礼人に、
「かかかか。フレバーの事に決まってんじゃん。」
礼人、
「かかかか。ゆず~~。なんか…ミスッた~~。頑張れ、頑張れ。」
右手を振って歩き出す礼人。
「…そんなあんたが、今、ようやく自分の場所に戻ってきた遊馬君。…逆に祝ってあげて。当然だと思う~~。」
「チーフ…。」
「いい…???遊馬君の事、帰ったら、祝ってあげな。それでなくても、あんたの部屋の隣の部屋じゃない。」
少し下を向いている橙に、
「分かった???」
橙、まだ、気持ちの整理が出来ないのか…、それでも、深呼吸して、ようやく、
「うん。…分かった。」
「よろしい。」
そして、橙の左肩をポンと、
「ほぃ。仕事、仕事~~。」
自分の席に向かう橙に音羽、
「ゆず~~、フレバーの阿川さんって方から外線~~。3番。」
橙、
「あ~~はい。分かりました~~。」
そして電話スタンドの受話器を左手で持って、
「お電話代わりました、お世話様です。ジェシカ、木葉です~~。」
自分の席に就く翠に、後ろむきのままに椅子をスライドさせて万美、
「さ~~て…。」
後ろ向きで電話をしている橙をみながら。
翠、
「言う事は、言った。」
万美、
「おぅ。」
仕事が終わり、ドアに向かう橙。
コーヒーカップを啜りながら薫郎、
「おぅ、お疲れ。うん。行っといで。」
橙、薫郎に、
「うん。」
そして、
「あっ、ユッキ。」
「…ふん…???」
キョトンとしている薫郎に橙、少し躊躇って、
「…あ、あ~~。」
目をキョロキョロとさせて、
「…うん。行ってきます。ありがと。」
そして小走りになる橙、スタッフたちに、
「お疲れさまでした~~。」
薫郎、振り返り、
「…ありがと…う…???うん…???」
その15分後、
「さ~~て、私らも帰るか~~。終わった~~。」
万美。そして、
「かかかか。もう…日々のお見舞いも、なしだね~~。チーフ殿…。」
翠、後ろからの声に、
「…ん…???うん。まっ、そだね~~。」
声を小さく。
「あらら、何だから…浮かない声…。」

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庄司紗千 花笠音頭
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。