どこからか声が聞こえたのと、誰かに背中を掴まれた感触に気付き、
ようやく我に帰った翠。
跪いて、右手は屋上の床に、そして左手は自然に車椅子の肘掛けに。
「わ…。わたし…???」
「何やってんだよ、死ぬ気かよ。」
全く自分が何処にいるのかも分からない翠。
「わた…し…。どうして…、ここに…???」
「知らねえけどさ、いきなり来て、いきなり手摺にぶつかって、そんで、いきなり手摺を乗り越えようとするから。何考えてんのかって…思って…。」
「わたし…。」
そして数秒黙って、
「そうだ…、父さん。父さんのとこ、行かなきゃ。」
そしてまた手摺に…。
「だから。何考えてんだって…。」
今度は強引に女性の病衣を掴んで引っ張る男性。
その力強い力に手摺から手は離れ、車椅子の方に倒れ込む翠。
男性、
「痛~~って。」
その瞬間、翠、
「あっ。ごめんなさい。ごめんなさい。」
その時、頭の中が晴れやかに。
「あっ。車椅子。ごめんなさい。」
そして男性の右足の包帯を見て、
「ごめんなさい。ごめんなさい。足…。」
さっきより、テキパキとした動きになった女性を見て男性、
「ようやく、気が付いたようだね。」
「私…。」
「なんだか…、自分がどうして、ここにいるのか、分からないって…とこか…???」
翠、首をコクリと。
「俺、ユウマ。みんなから…、そう呼ばれてる。」
翠、
「ユウマ…???…私は…、みどって…、みんなに呼ばれてる。」
男性、
「ふ~~ん。みど…か…。」
そして、少し間を置いて、
「なぁ~~。何があったか分かんないけど…。死のうなんて、絶対思うなよ。」
そんな男性の声に翠、
「えっ…???」
「俺さ。中学の時に、親戚に兄妹みたいに仲良くしていた女の子、いたんだ。その女の子、癌で死んだんだ。母さんと俺が見舞に行ったその日の午後に…。」
少し間を置いて。
「あいつの顔…、もう見れないと思ったら、無性に悲しくって、悔しくってさ。ず~~っと、泣いてた。…だから、もう…俺と同じくらいの子が、目の前で死のうなんて…。見たくないんだ。もっと、もっと、生きたかったはずなんだよ。あいつ。…でも…、癌だぜ。どうしようもないだろ。」
翠、
「……。」
「あいつを守ってくれる人は何人もいた。けど、癌には勝てない。」
そして、
「でも…、君は違うだろ。多分、これから身体、治るんだろ…???」
翠、首をコクリと。
「俺もこの骨折、しっかりと…治してやる。こんなことで、くたばっちまいたくねぇし。」
翠、
「……。」
「ベッドの中、退屈でさ。一昨日から、少しここに来て、外、観てんだ。」
翠、
「この…時間…???」
「うん。大体…そう。先生にも許可…、もらってるし。無茶だけはするなよって…、言われてるけど…。」
「車椅子、使い方、上手~~。」
翠。
「あ~~これ…???かか。適当に動かしてたら、慣れちゃったよ。まっ、左脚はピンピンだからね。」
そんな男性に、いつの間にかニッコリの…、翠。
《PR》
庄司紗千 花笠音頭
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。
