【太刀魚に感謝♪】





▶︎ 瀬戸内の朝、静かに始まる物語


瀬戸内の朝は早い。

まだ陽が昇る前の静かな港町。

潮の香りがふわりと漂う中、漁師の息子・まぁしぃは、今日も包丁を手に太刀魚を捌いていた。


「まな板、もうちょい奥だな。」

そう言いながら位置を直すまぁしぃ。

隣では先輩の “ゆき班長” が、昨日のライブの鼻歌を口ずさんでいる。


「班長、その歌、昨日のライブのやつですか?」

「そうそう。まだ耳に残っててさ。」


▶︎ 音楽仲間の“ゆきちゃん”と並んで





もう一人の ゆきちゃん は、音楽仲間でもあり、エプロン姿で包丁を構えていた。


「こうやって魚を捌くのやっぱり楽しいねぇ。」

「それそれ。太刀魚が会話を聞いてくれてるね。」

まぁしぃは優しく笑う。


テーブルにはピカピカ光る太刀魚が並び、

瀬戸内の命が3人の手元に集まっていた。


▶︎ 太刀魚を“リズム”で捌く3人





「まずは頭から。ここに骨があるから、力を入れすぎずに…そう、スッと。」


ゆき班長とゆきちゃんの手際は見事。

「綺麗な太刀魚だわぁ!」とゆきちゃん。


「でしょ? 海の魚は丁寧に扱うと、ちゃんと応えてくれるんだよ。」


頭・お腹・胴体・しっぽ――

4つに分けていく作業は、まるで 海辺のセッション のよう。

まな板の上では、包丁の “トントン” という音が響いていた。


▶︎ 小学校の頃の思い出





「まぁしぃ、あの頃思い出すねぇ。小学校の頃に掃除でちりとり持って一緒に動いてた時間。」


まぁしぃは照れくさく笑う。

「そうでしたね。あの時、ゆき班長に掃除の楽しさを教わりました。」


ゆきちゃんも笑いながら言う。

「掃除にありがとう、魚にありがとう…音楽も同じかもね。

音も命も、扱い方ひとつで全然違うものになる。」


その言葉に、ふたりは深く頷いた。


▶︎ 内臓の香りと“ふるさとの気配”


内臓を丁寧に取り除くと、海の香りがふっと広がる。


「この香り、懐かしい。」とゆきちゃん。

「うん、わしらの ふるさとの匂い だ。」とまぁしぃ。

「ほんとにそうだね。」とゆき班長。


3人の視線が、まな板の上の太刀魚に集まった。


銀色の体は、まるで “ありがとう” と光っているようだった。


▶︎ 先祖の記憶と、続いていく海の暮らし





「まぁしぃは漁師、何代目になるん?」

「先祖代々漁師で、ひいひいじいちゃんも漁師していたと思います!」


「すごいなぁ。海と共に生きるって、そんな簡単なことじゃない。」


「でも、こうやって手伝ってもらえると嬉しいんです。

魚を捌くって、一人じゃできないことが多いんですよ。」


ゆき班長が笑う。

「魚も人も、分け合って生きるもんだな。」


▶︎ ラップで包む、一つ一つの“命”


ラップで包まれていく太刀魚の切り身。

まぁしぃはその度に、小さく手を合わせた。


「今日も海に、魚に、仲間にありがとう。」


ゆきちゃんが笑顔で言う。

「ありがとうって、ほんとにあたたかいね。心の波が穏やかになる。」


「そう、波が立たんように生きるのも漁師の知恵よ。」

ゆき班長の冗談に、3人の笑い声が台所に広がった。


▶︎ 今日もまた紡がれる“海と人の歌”


その笑い声の向こうに、きらめく瀬戸内海。

世代を超えて続く “ありがとう”の心

魚を捌く音、潮の音、3人の会話――

それらはまるで、一つの歌のように流れていた。


今日もまた、海と人の物語が、静かに、やさしく紡がれていく。